マイナーなスポーツでは,(モデルが導き出したものであれ,専門家がもたらしたものであれ)新たに得られた知識は,きわめて高い価値を持ちうる。決定的な役割を担う変数についてはあまり知られていないので,頭の切れるベッターと一般のギャンブル客の腕前には,雲泥の差がつきかねない。テクノロジーの進歩は,ギャンブラーがより精度の高い予測モデルを構築するのに役立っているばかりではなく,賭けの方法に変化をもたらしてもいる。スーツケースに札束を詰め込んで持ち運ぶ日々は,まもなく終わりを告げる。今ではオンラインで賭けることが可能で,ギャンブラーは同時に何百件もの賭けを行なえる。このテクノロジーは,新しい種類の戦略への道も拓いた。スポーツベッティングではこれまでずっと,結果を正確に予想することに重きが置かれてきた。だが,科学的ベッティングはもはや,たんなる得点の予測という問題ではなくなっている。場合によっては,結果について何も知らないのに賭けることさえ可能になりつつあるのだ。
アダム・クチャルスキー 柴田裕之(訳) (2017). 完全無欠の賭け:科学がギャンブルを征服する 草思社 pp. 161-162
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