それ以上に極端なことをわざわざやる企業さえある。2011年にはアメリカのハイバーニア・アトランティック社が,3億ドルをかけて新しい大西洋横断電信ケーブルの敷設に乗り出した。完成した暁には,これまでにないほどの高速でデータが大西洋を越えることになる。従来のケーブルとは違い,新しいケーブルはニューヨーク=ロンドン間の飛行経路の真下を通る。それが両都市を結ぶ最短経路だからだ。現在,大西洋をメッセージが横断するのには65ミリ秒かかるが〔1ミリ秒は1秒の1000分の1〕,新しいケーブルはそれを59ミリ秒まで縮めることを目指している〔2015年より運用開始した〕。人間が瞬きするのにかかる時間が300ミリ秒であることを考えると,それがどれほどの短さか見当がつくだろう。
アダム・クチャルスキー 柴田裕之(訳) (2017). 完全無欠の賭け:科学がギャンブルを征服する 草思社 pp. 168-169
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