残念ながら,人は,相手が嘘をついているときに特有の兆候を特定するのがあまり得意ではない。2006年に58に及ぶ国々で調査が行なわれ,参加者は,「あなたは人が嘘をついているときに,どうしてそれがわかりますか?」と質問された。すると,ある回答が圧倒的に多かった。どの国の人もその回答をし,大半の国でそれが回答リストの1位を占めた。嘘をついている人は目を合わせようとしない,というものだった。これは嘘を見抜く一般的な方法ではあるが,とりたてて良い方法でもなさそうだ。嘘をついている人のほうが正直者よりも目を逸らしやすいことを裏づける証拠はない。これ以外に嘘をついている証拠だと思われているものにも,怪しげな根拠しかない。嘘をついている人のほうが見るからに活発だとか,話しながら姿勢を変えやすいなどというのも確かなことではない。
アダム・クチャルスキー 柴田裕之(訳) (2017). 完全無欠の賭け:科学がギャンブルを征服する 草思社 pp. 268
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