この時点で,私はもうほとんど有頂天になりかかっていた。私たちは,代謝の図書館の組織構造を支配する根本的な原理を探り当てたのだ。第一に,多くの代謝が同じ燃料分子で生存可能である——どの燃料を選ぶかはほとんど問題ではない。生物は,バイオマス構成要素を,多様な方法で,異なる多数の反応連鎖を通じて組み立てることができるのだ。第二に,こうした代謝の多くは互いに非常に異なっており,ごく少数の反応しか共有していない。第三に,私たちが見つけた生存可能な代謝は,巨大なネットワーク—遺伝子型ネットワーク—でつながっている。この遺伝子型ネットワークは,代謝空間のはるかに遠い場所まで到達していた。各主題領域はそのようなネットワークを一つもち,そうしたネットワークが代謝の図書館のなかで緻密に織り上げられた織物を形成している。
アンドレアス・ワグナー 垂水雄二(訳) (2015). 進化の謎を数学で解く 文藝春秋 pp. 139
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