ここで,大学卒業後にエンジェネラに入社し,今はデトロイトの花形コンサルタントになった20代の優秀な若者のことが思い出される。彼のGMATのスコアは群を抜いており,会社でも高く評価されていた。しかし,彼は米国の地理をほとんど知らないそうだ。グーグルで調べることができるからだ。さらに,もし米国地理に関するテストを受けることになっても,1時間あれば記憶できるそうだ。であれば,なぜその情報を覚えておく必要があるのだろうか。高度な思考作業に集中した方がよいというわけだ。
ここで,地理を覚えたり,知っていたりする必要がないと主張したいわけではない。18歳から24歳の若者のおよそ半数がニュースに出てきた国がどこにあるかを知る必要はないと言い,大学で勉強した若者のおよそ4分の3がイラク,イラン,サウジアラビアを地図で示すことができないというのは滑稽以外の何者でもない。ヘースティングスの戦いという歴史的事実があったこと自体を知っていなければウィキペディアで調べることもできないだろう。しかし,詳細を覚えるために苦労する必要はない。調べればすぐわかるからだ。
ドン・タプスコット 栗原潔(訳) (2009). デジタルネイティブが世界を変える 翔泳社 pp.170-171
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