これは親にとって大きな課題だ。子供たちが道を誤り,危険な領域に進み始めてしまったら,彼らのインターネット上での冒険にどう対応すればよいのだろう。まずはものごとを大局的にとらえることから初めてみよう。子供の死亡原因で最大のものは交通事故だ。2000年から2005年の間に米国では8歳から17歳の子供およそ9807人が自動車事故で亡くなった。そのうち10代が運転する車に乗っていたのは半数以上,また死亡した子供の3分の2がシートベルトをしていなかった。であれば,世の中の親がシートベルトに関して神経をとがらせるのであれば納得がいく。ところが私たちは,この目の前にある共通の殺人要因については恐れを感じていない。自分たちの制御できないところに潜む,目に見えない脅威への恐怖の方がずっと大きいのだ。とはいえ私は,子供を世界での冒険に送り出すための準備としては,従来通りのやり方が有効だと信じている。
賢い親は,たとえそれが可能であったとしても,家の外での冒険に出かける子供に毎回同伴したりはしないし,すべての電話をモニターしたり,パンフレットや本を全部見たり,家の中のテレビやパソコンの画面をいちいち調べたりはしない。同様に知らない人が校庭に潜んでいたり,恐ろしい画像が家のパソコンに表示されるかもしれなかったりする不完全な世界で,自分を守るための最善の手段を子供たちに教えるのがインターネット的に言って賢い親だ。しかし2002年の時点では,インターネット上での安全を守るための習慣について子供と話したことのある親は半数にも満たない。
ドン・タプスコット 栗原潔(訳) (2009). デジタルネイティブが世界を変える 翔泳社 pp.343-344
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