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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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勤勉さと生活スタイル

 歴史的に見て,欧米の農業は“機械”本位で発達してきた。欧米では能率をあげたいか収穫量を増やしたいなら,さらに性能のいい機具を導入し,機械に仕事をさせる。脱穀機,結束機(干し草を俵にする),コンバイン(刈り取り脱穀機),トラクター。そして,さらに土地を開墾して面積を増やす。機械を使えば,これまでと同じ労力でより多くの畑が耕せるからだ。
 だが,日本や中国の農業従事者は機械を買うお金がなかった。いずれにせよ,簡単に水田に変えられる余分な土地もなかった。だから稲作農家はより頭を働かせ,より時間をうまく使い,より良い選択を行うことで米の収量を増やした。人類学者のフランチェスカ・ブレイが言うように,稲作は“技術本位”である。もっとせっせと雑草を抜き,もっと肥料のやり方に習熟し,もっと頻繁に水量を見て回り,もっと粘土盤を均平にならし,もっと畝を隅々まで活用すれば,より多くの収穫が望める。驚くこともないが,歴史上,米を育ててきた者は常に,他のどんな穀物を育てた者よりも勤勉に働いてきた。
 そう聞くと,少々奇異に思われるかもしれない。なぜなら,「近代以前の人々は誰もが休む暇もなく働いてきた」と,たいていの人は考えるからだ。だが,そうではない。例えば,人間はみんな狩猟採集民の子孫だが,多くの狩猟採集民は,どう見てもかなりのんびりした生活を送っていた。カラハリ砂漠に暮らすボツワナのサン族(いわゆる,ブッシュマン)は,いまでも狩猟採集の生活様式を守る最後の種族のひとつだ。彼らは,豊富なフルーツやベリー類,根菜,木の実を食べて生きている。特にモンゴンゴは驚くほど多く採れ,栄養価が高く,地面に敷き詰められるほど落ちている。彼らは何も栽培しない。栽培(準備,種播き,除草,収穫,貯蔵)には時間がかかる。家畜も飼わない。
 男はたまに狩猟に行くが,それは主に気晴らしのためだ。男も女も週に12〜19時間しか働かず,残りは踊ったり,娯楽を楽しんだり,親戚や友人を訪ねたりして過ごす。彼らは年に最大1000時間しか働かない(「農業はやらないのか」と訊かれたとき,サン族の男は怪訝な顔つきで答えた。「モンゴンゴがたくさんあるのに,なぜ栽培する必要がある?」)。

マルコム・グラッドウェル 勝間和代(訳) (2009). 天才!成功する人々の法則 講談社 pp.264-266
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