論理的にも,事実としても,「デイトレードがかならず儲かる」というのは明らかな誤解である。それなのになぜ新規参入者があとを絶たないかというと,その理由は簡単で,テレビや雑誌,インターネットには「成功したトレーダー」しか登場しないからである。損をして退場していったひとたちは,大きな声で自らを語らない。その結果,「すべてのトレーダーが成功している」という錯覚が生じる。
もうひとつは,インターネット証券を中心に,デイトレーディングや短期トレーディングをそそのかす宣伝活動が組織的に行なわれているためである。
日本のネット証券は仁義なき手数料の引き下げ競争に突入し,もはやふつうに商売をしていては利益を出せなくなってしまった。1回あたりの儲けが少ない以上,薄利多売で稼いでいくしかない。デイトレーダーの数が増えつづけることがビジネスの前提になっているのだ。
橘 玲 (2006). 臆病者のための株入門 文藝春秋 pp.74-75
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