知能検査の目的は(それが果たされたかどうかは別にして),知能の状態の把握にある。そして,把握した結果は何らかの形で表記するのであるが,その表し方はすべて同じだというわけではない。ここでまとめておきたい。
段階ービネの本来の目的は,「遅れがある/ない」の把握であった。
年齢水準ービネの改訂版で現れた考え方で,検査を受けた子どもが「一般的な他の子どもたちでいうと何歳程度の発達水準にあるか」ということを把握する。
IQーシュテルンによって提唱されたもので「精神年齢を実際の年齢で割ってそれに100を掛けることで指標化」したものである。100が標準。実用化したのはターマン。
知能偏差値ーウェクスラーによって提唱されたもので,年齢母集団の分散を加味した上で指標化したものである。100が標準。
これら4つの中で最も広く知られているのがIQである。また,ビネの最初の取り組み以外は結果を数値で表すようになってきていることに注意されたい。そして,この数値化はある意味で便利であるが,きれいな花にはトゲがある,のたとえどおり非常に大きな副作用があったのである。それは序列化である。数値化されるとそれを比較するのが簡単になる。数字自体に強烈な序列性があるからである。そしてその数字=序列が猛威をふるったのだ。人種間,階層間の比較によっていわれのない差別を受けた人が少なくなかったのはすでに述べた通りである。
サトウタツヤ (2006). IQを問う 知能指数の問題と展開 ブレーン出版 p.96-97.
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