夢に現れるこのような七変化は昔から科学者の興味をそそってきた。19世紀末のベルギーの心理学者ジョセフ・デルブッフはこうした変化について分析を試みた。それによると,私たちは他人に夢の話をするときにネコが女性に変わったとは言わない。「私はネコと遊んでいた。気がつくと,相手はネコではなく,若い女性だった」というふうに話す。このことから,私たちはまずネコの夢を見て,その後でそれとは別に女性の夢を見る。そして,思い出すときに2つをつなげてネコが女性に変身した話にするのだと,デルブッフは推測した。「デルブッフが明らかにしたように,夢の一貫性のなさは,夢だけに特有のものではない。起きているときの思考も実は夢と同じように混沌としている。ただ,覚醒時の思考は論理的に結びつけられた知覚を伴うために,一貫性があるように見えるだけだ」と,スイス・ジュネーブ大学の生理学・臨床神経科学部の夢研究者ソフィー・シュワーツは説明している。
アンドレア・ロック 伊藤和子(訳) (2009). 脳は眠らない:夢を生み出す脳のしくみ ランダムハウス講談社 pp.199-200
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