夢精は思春期によく起きる。性体験がなく,とくにエロティックな夢を見ていないときでも,夢精をすることがある。ラバージによると,レム睡眠のたびにペニスは自動的に勃起するので,その刺激で射精するのだろうという。もっとも,多くの場合,夢精は性的な夢を見ているときに起きる。レム睡眠中にペニスが勃起したとき,その感覚情報が脳に伝わり,脳はそれを説明するためにエロティックな筋書きをつくるのだろうと,ラバージは説明する。つまり,生理的な反応のほうが先で,脳はそれに合わせた夢を紡ぎだしているというのだ。明晰夢の場合は,その情報の流れが逆になる。夢を見ている人が意識的にセックスをもちこむため,エロティックな内容のほうが先になるのだ。通常なら脳から信号が性器に伝わって射精が起きるが,レム睡眠中は運動神経系の指令がほとんどブロックされているため,それが伝わらず射精にはいたらない。
アンドレア・ロック 伊藤和子(訳) (2009). 脳は眠らない:夢を生み出す脳のしくみ ランダムハウス講談社 pp.244-245
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