第3代アメリカ合衆国大統領トーマス・ジェファーソンは「幸福の追求」というスローガンを掲げたが,幸福という言葉と「追求」という能動的な言葉の組み合わせは,アメリカ人から,幸せが「福」によってもたらされるという受動的要素を含んでいる面を忘れさせた第一の原因ではないかという気がする。英語のHappinessの語源はHapless(ついていない)という英語からもわかるとおり,もともとHappinessは運によるという認識が英語でも強かった。それが,ジェファーソンの有名な「幸福の追求」という新しい概念の浸透により,アメリカでは幸福が能動的なものに変わってしまい,努力さえすれば果たせないことなど何もないという楽観的思想を育んだのではないだろうか。ここからも,幸福感が歴史的,文化的風潮によって変化していくことが見て取れる。
大石繁宏 (2009). 幸せを科学する:心理学からわかったこと 新曜社 pp.14-15
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