また,少なくとも幸福感についての信条は,一部文化的起源があることはいなめないであろう。たとえば,アメリカでは「元気?」という挨拶に「疲れているの」とか,「忙しすぎて死にそう」だとか弱音を吐いたり,同情を求めるような態度を一部のケース(家族と真の友人)以外では見せてはいけない。弱音を吐いていると,友達になったら「お荷物」になりそうな,面倒な人間と見られる可能性が高く,アメリカ人からは避けられる可能性が高い。アメリカでは,弱音を吐かず,いつも元気で幸せでいる人がうまく生きている人であり,友達になり甲斐のある人物なのである。そうであるから,できるだけ明るく,幸せに振る舞わなければ,というプレッシャーも自然と生まれる。また,このため,自分の人生を振り返る際も,良かった出来事に焦点を当て,自分の人生は全般的に肯定的であるという信条を持ち,その信条と一貫性のある自己報告をすることになることが多いのであろう。まさに,“Don’t Worry, Be Happy!”なのである。
大石繁宏 (2009). 幸せを科学する:心理学からわかったこと 新曜社 p.43.
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