最近起こった出来事でも,悲惨な出来事と幸福な出来事の人生全体の満足度に及ぼす影響力は等しいわけではない。嫌な出来事のほうが,良かった出来事より影響力が強いというのは,さまざまな調査で明らかにされている。たとえば,われわれが行った研究でも,アメリカの大学生は誰かに1回批判された場合,他の人から2回くらい褒められなければ,批判される前の気分には戻れないという結果が出ている。つまり,ネガティブな出来事はポジティブな出来事の2倍くらいの力があるようである。しかし悲惨な出来事でも,普通の人間は予想以上にうまく適応しているケースも多い。有名な社会心理学者のダン・ギルバートとティム・ウィルソンはこれを心理的免疫と呼び,われわれがこの心理的免疫を過小評価する傾向があることをさまざまな実験を通して実証している。
大石繁宏 (2009). 幸せを科学する:心理学からわかったこと 新曜社 pp.90-91
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