夫婦のコミュニケーション研究という点では,ワシントン大学のジョン・ゴットマン教授が第一人者であるが,彼の一連の研究では,ビデオテープで夫婦のコミュニケーションを記録し,その言語と非言語(ジェスチャー,表情など)によるコミュニケーションのパターンを丁寧に分析し,夫婦の結婚生活への満足度やその後の離婚率などとの相関を検証している。夫婦のコミュニケーションを観察してみると,夫婦関係の良好なカップルでは,褒め言葉が批判的な言葉のなんと5倍ほど交わされたそうである。この割合よりも批判的な言行(ジェスチャーも含めて)が多いと,全般的な関係には不満が強かったらしい。また,15分間ほどのインタビューでの肯定的なコミュニケーションと否定的コミュニケーションの比率から,将来の離婚率が90パーセント以上の確率でわかるというからすごい。この結果も,マレイ教授の対人関係における「肯定的幻想」同様,パートナーに対する肯定的な態度とやさしさが夫婦関係に大きく貢献することを物語っている。
大石繁宏 (2009). 幸せを科学する:心理学からわかったこと 新曜社 pp.106-107
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