インターネットで検索すると,オフショア法人設立をうたう多数の香港業者が表示される。なかには日本語ページを持つ業者もあり,法人設立まですべて日本語のEメールですんでしまう。費用は,銀行口座込みで20万〜30万円程度だ。
香港経由のBVI法人は,その性格上,香港内の金融機関に口座がないと役に立たない。かつては最大手の香港上海銀行に口座開設するのがふつうだったが,マネーロンダリング規制の強化によって営業実態の証明が必要になり,最近ではより敷居の低いスタンダードチャータード銀行などが利用されている。
こうした香港の金融インフラを,バブル崩壊後も現地に残った日本人証券マンが利用し,オフショアを通じた証券投資スキームをつくりあげた。日本と香港には1時間の時差しかないので,投資家は国内取引と同様に気軽に電話で注文を出せる。売買以来はオフショア法人から香港の証券業者を経由して日本の証券業者に発注され,完璧な匿名性に守られて執行されるのである。
こうした手法が人気を集めた結果,いまでは日本企業の大株主にわけのわからないカタカナ名のペーパーカンパニーが名前を連ねるようになった。これを経済紙誌は「外国人投資家」と呼ぶが,その多くは日本人である。
橘 玲 (2006). マネーロンダリング入門:国際金融詐欺からテロ資金まで 幻冬舎 pp.196-197
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