1992年,米国でC.K.ミーダー博士が「サザン・メディカル・ジャーナル」に発表した論文には,2人の医師が観察した出来事が述べられている。ブードゥー教の聖職者と言い争いをした時,死をもたらす呪いをかけられたと信じた男性が,ものを食べるのをやめ,衰弱して,入院せざるをえなくなった。チューブを通して栄養を与えられ,人事不詳になって瀕死の状態に陥った。医師たちが調べても,この人の臓器に何の病気も見つからなかった。
担当医師は,おびえている患者の妻や身内の目の前で患者に,ある事実を「明かし」た。医師自身,少し前にこの患者についてそのブードゥー教の聖職者と激しい言い争いをし,手荒な脅しによって,患者が抱えている問題の正体を白状させたと言ったのだ。それによると,まじないの力でトカゲが1匹患者の体内に棲みついて,患者が食べたものを食いつくし,さらに患者のはらわたまで貪っているというのだった。意思は,このような説明をしたあと,嘔吐を引き起こす薬を患者に注射して,患者が吐いたところに早業でトカゲを1匹置いた。患者は眠り込み,翌朝目覚めたときには食欲のかたまりになっていて,1週間後に退院した。
バート・K・ホランド 林 大(訳) (2004). 確率・統計で世界を読む 白揚社 p.116-117.
PR