司法現場で査定される人々は,質問紙検査に偽りの答えをしたり,判定にとって重要なことを答えなかったりすることが時々ある。しかしこの問題はロールシャッハテストでも解消されることはない。このような場合のよりよい解決法は,経歴データや観察データを集めることである。
たとえば,ある人が情報を隠しているのではないかと疑われる場合には,心理学者はその人を長い間にわたって知っている別の信頼できる人に平行して面接を行なうことができる。査定される人について,職歴,学歴,重要な関係,犯罪行為,心理的既往症などを含む,十分な個人データを集めることも有効な方法である。また,査定される人から得られた情報は,事例記録やその他の資料からの独立のデータで補完することもできる。
要するに,司法場面で虚偽が疑われる場合に,査定者がロールシャッハテストの疑わしいエックス線パワーにたよることは賢明なやり方ではない。そのようなやり方ではなく,心理学者と弁護士によって役に立つことが以前から認められてきた,より信頼できる情報源を求めるべきである。
J.M.ウッド,M.T.ネゾースキ,S.O.リリエンフェルド,H.N.ガーブ 宮崎謙一(訳) (2006). ロールシャッハテストはまちがっている—科学からの異議— 北大路書房 p.244-245.
(Wood, J. M., Nezworski, M. T., Lilienfeld, S. O., & Garb, H. N. (2003). What’s Wrong with the Rorschach?: Science Confronts the Controversial Inkblot Test. New York: John Wiley & Sons.)
PR