包括システムはしばしばまちがった結果を生じるので,それを用いると子どもの生活にとってきわめて悪い結果をもたらす可能性がある。心理学者が,異常ありというテスト結果を無批判に正しいものとして受け入れてしまうと,事態は最悪である。もしこのまちがった情報が親や教師,医師に伝えられると,健康であるか,または大したことではない心理的問題を抱えているだけの子どもが,深刻な障害をもっているとみなされてしまうことになるかもしれない。場合によっては,この誤った情報のために,子どもに向精神治療薬や,他の不適切な介入が行なわれることになるかもしれない。
たとえこのテスト結果が正しくないことが認識される場合でも,有害な結果になってしまう可能性がある。最近ある心理学者がインターネット・リストに,包括システムによってきわめて異常であるとまちがって判定された少年をめぐる彼の経験を詳しく述べている。この心理学者は賢明にもこのテスト結果を軽視した。しかし「不幸なことに,あるソーシャルワーカーが[ロールシャッハテストの]印刷出力を手に入れて,この少年が統合失調症であるという問題をもち出してしまった。まったくひどいことになったものだ」。
J.M.ウッド,M.T.ネゾースキ,S.O.リリエンフェルド,H.N.ガーブ 宮崎謙一(訳) (2006). ロールシャッハテストはまちがっている—科学からの異議— 北大路書房 p.242
(Wood, J. M., Nezworski, M. T., Lilienfeld, S. O., & Garb, H. N. (2003). What’s Wrong with the Rorschach?: Science Confronts the Controversial Inkblot Test. New York: John Wiley & Sons.)
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