心理学者の中にはロールシャッハテストをこのように精神分析的に解釈する人がいるが,ヘルマン・ロールシャッハが考えていたのはまったく違うことであった。彼は人々が見る性的あるいは攻撃的イメージにはあまり関心がなく,それらのイメージの動きと色彩のほうに関心があった。ある女性が図版の中に彼女の父親を思わせる怪物を見たとすると,おそらくロールシャッハは,そのモンスターが動いているように見えたかどうか,この女性のイメージの選択に図版の色が影響していたかどうかにもっとも関心を向けたことだろう。動きと色の知覚が現実に対する人の基本的な態度を表すということが彼の中心的な考えであり,『精神診断学』のほとんどのページがそのことにあてられていた。
J.M.ウッド,M.T.ネゾースキ,S.O.リリエンフェルド,H.N.ガーブ 宮崎謙一(訳) (2006). ロールシャッハテストはまちがっている—科学からの異議— 北大路書房 p.27
(Wood, J. M., Nezworski, M. T., Lilienfeld, S. O., & Garb, H. N. (2003). What’s Wrong with the Rorschach?: Science Confronts the Controversial Inkblot Test. New York: John Wiley & Sons.)
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