ロールシャッハ図版が心理学を専門としていない人々に知られてしまっても問題がないかどうかについては,心理学者の考えは決まっていない。心理専門職に携わる人々は,心理検査の材料が一般の人々に知られると,そのテストが役に立たないものになってしまうかもしれないので,それを知られないようにしておく必要があると考えている。たとえば,本書でロールシャッハ図版を見たことがある読者が,後にこのテストを受けることになった場合には,おそらく図版を見たことがない場合とは違う反応をして,テスト結果は妥当なものではなくなってしまうだろう。時々あるように,ロールシャッハ図版のコピーがウェブ・ページに掲載されたり,その他の手段で一般の人々の目にふれるようにされたりすると,心理学者が激怒することがあるのは,この理由からである。
J.M.ウッド,M.T.ネゾースキ,S.O.リリエンフェルド,H.N.ガーブ 宮崎謙一(訳) (2006). ロールシャッハテストはまちがっている—科学からの異議— 北大路書房 p.19
(Wood, J. M., Nezworski, M. T., Lilienfeld, S. O., & Garb, H. N. (2003). What’s Wrong with the Rorschach?: Science Confronts the Controversial Inkblot Test. New York: John Wiley & Sons.)
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