ファラデーが確立に貢献したエネルギーの概念がいかに斬新であったかを,人は忘れがちである。彼はこのように言っている。あたかも神が宇宙を創造したときと同じように,わたしはわたしの宇宙を創造するにあたり,Xという量のエネルギーをそこに置こう。わたしは恒星を成長させて爆発させ,惑星を軌道に乗せる。人々に大都市を築かせ,その大都市を破壊する戦いが起きると,生存者に新たな文明を築かせる。火が生まれ,荷馬車を引く馬や牛が現れる。石炭や蒸気機関,工場,さらには強力な機関車までもが登場する。しかし,その一連の出来事を通じて,たとえ人々の目に見えるエネルギーの形態が変わったとしても,たとえ人間や動物の筋肉から放出される熱となっても,滝の飛沫や火山の噴火というかたちをとったとしても,種類に関係なくエネルギーの総量は常に一定である。わたしが最初に創造したエネルギーの量は変化しない。当初あった量からわずかたりとも減ることはない。
デイヴィッド・ボダニス 伊藤文英・高橋知子・吉田三知世(訳) (2005). E=mc2 世界一有名な方程式の「伝記」 早川書房 pp.29-30
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