1821年の夏の終わり,ファラデーは電気と磁気の関連性について研究しはじめた。電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルが生まれる20年前,アインシュタインが生まれる50年以上も前のことである。ファラデーはまっすぐ立てた1本の棒磁石を用意した。彼は自分の奉ずる宗教に影響され,目に見えない円環状の渦が磁石をめぐっていると考えた。その推測が正しければ,だらりと垂らされた導線はそれに引きよせられ,小舟が渦に巻きこまれるように神秘の円に捕らえられるはずだ。彼は電池を接続した。
その直後,ファラデーは電磁気回転という世紀の発見をなした。
この発見を発表して,王立協会会員となったファラデーについて,真偽のほどは定かではないが,このような逸話がある。当時の首相にこの発明がどんな役に立つのかと問われたファラデーは,こう答えたという。「そうですね,首相,いずれこれに税を課することができるでしょう」
デイヴィッド・ボダニス 伊藤文英・高橋知子・吉田三知世(訳) (2005). E=mc2 世界一有名な方程式の「伝記」 早川書房 p.25
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