創造性と密接に結びついているのが,奇人の強烈な好奇心である。われわれが接した奇人のほとんどは次のように語った。他のみんなとちがっているのを最初に自覚したのは子どものころだった,というのも自分はいつも根源的な答えを探していたからだ,と。親に「なぜ?」とたずねるとき,かれらは答えが「……だから」ではけっして満足せず,ましてや「私がそう言うからそうなの」でよしとはしなかった。好奇心は人間だけの動機づけであり,もともと知的なものである。心理学者によっては,それを固有の動機づけとよぶ。なぜなら,発見のプロセスはそれに特有の報酬だからである。人はだれでもいくつかの物事に好奇心を——おそらくは強烈なまでに——もつが,いっこうに答えが見出せない場合,その興味はしだいに薄れていくだろう。ところが奇人の場合は,答えを見つけることが頭から離れなくなる。19世紀のイギリスの博物学者チャールズ・ウォータートンは,南米の熱帯雨林での学術調査を指揮する一方で,数カ月ものあいだハンモックから足を出してぶらぶらさせながら眠り,吸血コウモリに噛まれるのを心待ちにしていた。彼は「その挑発的な畜生どもに」まるで相手にされず,「ものすごくがっかりした」そうだ。ウォータートンは髪をクルーカットにした最初の人でもある。
デイヴィッド・ウィークス,ジェイミー・ジェイムズ 忠平美幸(訳) (1998). 変わった人たちの気になる日常 草思社 pp.36-37
(引用者注:「固有の動機づけ」とは,“intrinsic motivation”で「内発的動機づけ」のことだと思われる。誤訳。)
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