私たちは,期待や仮説のような思いこみを持ってしまうと,日常経験でそれに当てはまることに敏感になります。それが占いが当たったように感じる1つの原因でもあります。つまり,今日の運勢などで,あいまいに出会いや出来事をほのめかされているといつもなら気にもとめない経験でも,「今朝の占いで言っていたことってこのことかな」と当てはめてしまうのです。そしてこの的中感が相手方のトークを信じる源泉となるのです。
もっといい例がありました。実は,あるお父さんが,ちょっと髪の毛が薄くなってきて気にしていました。それである日,とある付け薬が効くと信じて購入し,毎日忘れずに数回振りかけて頭をとかしていました。
しばらく経って,大学生の娘に,「どうだ,少し効いてきた気がしないか」と頭の上を見せながら聞くのですが,どうも娘には頭髪になんの変化も感じられませんでした。それでどんな薬か手に取って見たところ,とんでもないことを発見してしまいました。なんと,その薬瓶には,内キャップがあって,それがはまったままだったのです。ということで,このお父さん,1滴も使わずに効いてきた気がしていたということに初めて気づき,立場を失いました。
西田公昭 (2005). まさか自分が…そんな人ほど騙される 詐欺,悪徳商法,マインド・コントロールの心理学 日本文芸社 p.81-82.
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