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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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相対的変化であることに注意

 また,1人で音読すると,前頭前野を含む広範な部位で,脳血流の増加が認められるが,大勢で一斉に音読すると,前頭前野の血流の相対的な増加が見られないことも,明らかになっている。1人で音読をする作業と,大勢で一緒に音読をする作業の大きな違いは,後者では,他人の音読する声を聞きながら,自分も(それと調子を合わせて)音読するということだ。単純に考えれば,他人の声を聞くために,側頭葉などの脳も同時に活性化し,そのために,相対的な血流変化がより広汎に起こったと考えれば説明がつく。
 何度も繰り返すが,fMRIで相対的な血流増加が見られないところにも,ちゃんと血流は流れ,ニューロンの活動はある。他人の声を聞くという聴覚認知により多くの血流が割かれれば,前頭前野の相対的な血流増加が帳消しになるのは説明がつく。
 しかし,前頭前野の血流増加を重視する「学習療法」の提唱者は,音読は1人でしなければ効果がない,とあくまで前頭前野の血流増加をきたす学習に執着するのである。しかし,その理論的根拠は明らかではないし,唯一の実証的な効果についても,再三述べてきたように,実験計画上の問題(対照のとり方)や,病的状態での効果という制約によって,決して一般化できるようなものではないのである。

榊原洋一 (2009). 「脳科学」の壁:脳機能イメージングで何が分かったのか 講談社 pp.132-133
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