親や高校の先生には明らかなことであるが,思春期の若者は他者からどのように見られているかに強い関心をもっており,あらゆる視線が自分に注がれている,実際に他者から見られていると完全に信じている(Elkind, 1967)。そして,「名誉挽回は無理だ」とか「いっそ死んだ方がましだ」といった非合理な考えに至ることが多い。実際,多発する思春期の自殺は,面子を失ったという思い込みが生み出す屈辱感が引き金となる(Shaffer, 1974, 1988)。自殺する可能性のある人が,面子を失ったと現実以上に思い込んでしまっている,言い換えれば,他者は自分の欠点に気がついており,よく覚えており,評価していると考え過ぎてしまっているのだとしたら,それだけスポットライト効果の研究は自殺という現代における危急な問題について語るべき重要な事柄を含んでいることになる(Garland & Zigler, 1993)。
T.ギロビッチ,J.クルーガー,& K.ザビツキー (2001). 日常生活の中の自己中心性と対人的問題 R.M. コワルスキ&M.R.リアリー(編著) 安藤清志・丹野義彦(監訳) 臨床社会心理学の進歩 実りあるインターフェースをめざして 北大路書房 72-105.
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