この考え方によると,断層のどんな部分でも,大地震を起こしていない期間が長いほど次の地震はすぐに起きるという,一見合理的な推測にいたる。地球上のある地域では「大地震の発生が遅れている」,という話をよく聞く。この考え方は合理的で当然のものに思えるが,ところがありのままの統計データは実はまったく逆を示している。地震の間隔を統計的に詳しく調べたところ,ある地域で地震の発生しなかった期間が長いほど,近い将来にそこで地震が発生する可能性は低くなるということが見出されたのだ。ロンドンの人々は,19番のバスを1時間も待った挙げ句,1度に3台もやってきた,とよく不満を垂れる。地震もそうなのだ。地震はまとまって起きるのである。現在地震を予知する最良の方法は,一度地震が起きるのを待ち,そして直ちに,別の地震が起きるという予知を出すという方法だろう。
マーク・ブキャナン 水谷 淳(訳) (2009). 歴史は「べき乗則」で動く:種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 p.67
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