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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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古今東西すべてが収められている図書館

 五百年前,上のほうのひとつの六角形の監督者が,他の本と同じように判然としないが,しかし同じ行がほとんど2ページ続いている1冊の本を見つけた。発見した本を巡回解読係に見せると,この男は,ポルトガル語で書かれているといった。他の連中は,イディッシュ語で書かれていると教えた。1世紀たたないうちにその言語が突き止められた。それは,古典アラビア語の語形変化を有する,グアラニー語のサモイエド=リトアニア方言であった。その内容もまた解読された。それは,無限に反復されるヴァリエーションの例示を付した,結合的分析の概要であった。これらの例示のおかげで,ある天才的な司書が図書館の基本的な法則を発見した。この思想家のいうには,いかに多種多様であっても,すべての本は行間,ピリオド,コンマ,アルファベットの25字という,同じ要素からなっていた。また彼は,すべての旅行者が確認するに至ったある事実を指摘した。広大な図書館に,同じ本は2冊ない。彼はこの反論の余地のない前提から,図書館は全体的なもので,その書棚は二十数個の記号のあらゆる可能な組み合わせ—その数はきわめて厖大であるが無限ではない—を,換言すれば,あらゆる言語で表現可能なもののいっさいを含んでいると推論した。いっさいとは,未来の詳細な歴史,熾天使らの自伝,図書館の信頼すべきカタログ,何千何万もの虚偽のカタログ,これらのカタログの虚偽性の証明,真実のカタログの虚偽性の証明,パシリデスのグノーシス派の福音書,この福音書の注解,この福音書の注解の注解,あなたの死の真実の記述,それぞれの本のあらゆる言語への翻訳,それぞれの本のあらゆる本のなかへの挿入,などである。

ボルヘス, J. L. 鼓 直(訳) (1993). バベルの図書館 伝奇集 岩波書店 pp.108-109
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