基本戦略は,戦争だけでなく,国力を構成するすべてのプロセスに関わるものだ。しかしアメリカの基本戦略は,実際に戦争や,戦争と経済生活との相互作用に,他国より大きな比重を置いている。歴史的に見てもアメリカは好戦的な国なのだ。
たとえばアメリカは,その歴史全体のおよそ10パーセントの期間を,戦争に費やしている。この場合の戦争とは,1812年戦争(米英戦争),アメリカ・メキシコ戦争(米墨戦争),南北戦争,第一次および第二次世界大戦,朝鮮戦争,ベトナム戦争の大規模な戦争を指し,米西戦争や砂漠の嵐といった小規模な紛争は含まない。20世紀だけをとってみても,アメリカが戦争を戦っていた期間は15%にあたる。20世紀後半に限れば,その割合は22%にも上る。そして21世紀が始まった2001年以来,アメリカは戦い続けている。戦争はアメリカの歴史の中核をなしており,アメリカが戦争を戦う頻度は高まる一方だ。戦争はアメリカ文化に組み込まれており,アメリカの地政学的状況に深く根ざしている。したがって,アメリカが戦争を行う理由をはっきりと理解しておく必要がある。
ジョージ・フリードマン 櫻井祐子(訳) (2009). 100年予測:世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図 早川書房 pp.64-65.
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