10人の子どもは,18世紀のフランスでは天の恵みだったかもしれない。だが19世紀末のフランスでは重荷だった。そして20世紀末のフランスでは破滅を意味した。現実が十分理解されるまでには時間がかかったが,子どもがほとんど死ななくなったこと,そして子どもを育てるにはとても金がかかるということが,やがて明らかになった。そのようなことから少子化が進み,経済的利益よりも,子どもを持つ喜びのために,子育てがなされるようになった。避妊などの医学の進歩も寄与したが,出生率の低下を促したのは,子どもを産み育てるのにかかる莫大な費用だった。かつて子どもは冨の生産者だった。だが今や養育費は顕示的消費(財力を誇示するための消費)の最たるものになった。かくして親たちは子どもを育てる必要を,10人ではなく,1人の子どもで満たすようになったのである。
ジョージ・フリードマン 櫻井祐子(訳) (2009). 100年予測:世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図 早川書房 p.89
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