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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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日本のこれまでとこれから

 日本とその歴史について,もう少し詳しく見てみよう。日本は現在世界第2位の経済大国であり,今世紀中もその地位を維持するだろう。殖産興業の時代から第二次世界大戦を経て,1980年代の奇跡的な経済成長の間も持ちこたえた日本の社会構造は,いろいろな意味で産業化が始まる以前の社会構造とまったく変わっていない。
 日本には,経済政策や政治方針を大きく転換しても,国内の安定が損なわれないという特質がある。日本は西洋との邂逅を経て,自分たちのような国が列強の前ではひとたまりもないことを痛感すると,めまぐるしいほどの速さで産業化を推進した。第二次世界大戦が終わると,社会に深く刻まれた軍国主義の伝統を捨て去り,突如として世界で最も平和主義的な国に生まれ変わった。日本はその後めざましい成長を遂げた。1990年には金融危機の影響で経済成長が止まったが,このときも運命の逆転を淡々と受け止めた。
 日本が大きな社会変革を経ても基本的価値観を失わずにいられるのは,文化の連続性と社会規律を併せ持つからである。短期間のうちに,しかも秩序正しいやり方で,頻繁に方向転換できる国はそうない。日本にはそれが可能であり,現に実行してきた。日本は地理的に隔離されているため,国家の分裂を招くような社会的,文化的影響力から守られている。その上日本には,実力本位で登用された有能なエリート支配層があり,その支配層に進んで従おうとする,非常に統制の取れた国民がいる。日本はこの強みを持つがために,予測不能とまでいかなくても,他国であれば混乱に陥るような政策転換を,難なく実行することができる。
 日本が2020年代になっても,まだ遠慮がちな平和主義国のままでいるとは考えがたい。もちろん,日本はできるだけ長くこのスタンスを維持するだろう。第二次世界大戦の恐怖がいまも国民的記憶として長く残る日本は,軍事対決の意志を持たない。その一方で,日本にとって現在の平和主義は,永遠の原理ではなく,順応性のあるツールである。日本の産業,技術基盤をもってすれば,政策転換さえできれば,より積極的な軍事方針に転換することは可能である。そして今後日本が人口や経済面で重圧を経験することを考えれば,この転換はまず避けられないだろう。

ジョージ・フリードマン 櫻井祐子(訳) (2009). 100年予測:世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図 早川書房 p.213-215
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