いわゆる「自然科学」ということばを耳にしたとき,私たちは“白衣を着て実験室内で試験管を振っている”ステレオタイプな科学者をつい連想します。もちろん,そういう典型的な自然科学は実際にあります。実験系の物理学や化学や生物学のラボ(実験室)ではおそらく大方のイメージ通りの科学者が実在しているはずです。
そのような典型科学は,次に挙げるいくつかの基準を設けることにより,科学的知識を獲得しようとします。
第1に,「観察可能」であること——ある現象に関する仮説なり理論をテストするためには,それが直接的に観察できなければならないという基準。
第2に,「実現可能」であること——ある化学反応(炎色反応のような)や物理現象(重力のような)に代表される自然界の過程に関しては,実験することによってはじめて科学的な知見が得られるという基準。
第3に,「反復可能」であること——ある自然現象に関する知見が正しいものであれば,同じ実験結果はいつでもどこでも誰がやっても確実に得られるという基準。
第4に,「予測可能」であること——自然現象に関するある主張から導かれる予測を現実のデータに照らしてみることにより,その主張の正しさがテストできるという基準。
第5に,「一般化可能」であること——現象に関する普遍的な法則性(万有引力の法則のように)として定式化できるという基準。
三中信宏 (2006). 系統樹思考の世界:すべてはツリーとともに 講談社 pp.38-39
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