以上すべてから引き出される結論は,単純明快だ。もし「宗教とは,宇宙の賢く不滅の創造主に従うことによって,どうすれば私たちの魂が救われるかを説く教えを信じることだ」と言う人がいたら,その人はたぶん,いろんな土地を旅したり,広くいろんなものを読んだりしていないのだ。多くの文化では,死者はこの世に戻ってきて生きている者たちを怖がらせると考えられているが,どの文化でもそうなわけではない。ある特殊な人々が神や死者と交信できると考えられている社会もあるが,この考えもどこにでも見られるわけではない。また,人間の魂は死後も生き続けるとするところもあるが,この仮定もまた,普遍的なわけではない。私たちが宗教について一般的な説明を考え出そうとする場合,その説明はほかの宗教にも通用するものかを考慮すべきだろう。
パスカル・ボイヤー 鈴木光太郎・中村潔(訳) (2008). 神はなぜいるのか? NTT出版 p.16
(Boyer, P. (2002). Religion Explained: The Human Instincts that Fashion Gods, Spirits and Ancestors. London: Vintage.)
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