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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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私たちが優れたゲーム理論家ではない理由

 なぜ私たちはみなすぐれたゲーム理論家ではないだろう?なぜ,意識せずに正確な計算を行っているということがわからずに,曖昧な概念(この人は「好ましい」,この集団は「友好的」だ)をもつのだろう?推論システムで行われていることが意識できないのには,いくつかのもっともな理由がある。第1に,私たちの心的システムは強い動機づけを生み出すように設計されており,感情という価値の報酬を私たちにもたらすことでそれを成し遂げる。もしそれが強い感情的な経験でなければ,私たちは,理想的な配偶者を選ぶのに多大な努力と資源を投資したりはしないだろう。感情は,選択を誤ったらどうなるかという抽象的な記述よりもずっと容易に,私たちを正しい方向に駆り立てる。第2に,私たちの推論システムはきわめて複雑である。理想の配偶者を選んだり,大きな会社のなかで信頼できる協力者を選ぶのがかなり難しいのは,抽象的な「適切な人」などというものがないからである。それは,もっぱら文脈——自分がなにを必要とし,なにを提供しなければならないか,ほかの人たちがなにを必要とし,なにを提供してくれるか——に依存し,これらの変数の変化にともなって,すべてが変化する。膨大な数の関連する手がかりに注意し,たえずその重要性を評価することは,反応が鈍く慎重な私たちの思考にとってあまりに複雑すぎる。そして,社会的相互作用のための私たちのシステムは,国家,企業,団体や社会階級のような巨大な集団や抽象的な制度を背景に進化したのではない。私たちは,狩猟採集の小さな集団として進化した。そしてそのような生活が,私たちの社会的心という特別な特徴を発達させたのである。

パスカル・ボイヤー 鈴木光太郎・中村潔(訳) (2008). 神はなぜいるのか? NTT出版 pp.325-326
(Boyer, P. (2002). Religion Explained: The Human Instincts that Fashion Gods, Spirits and Ancestors. London: Vintage.)
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