しかし,サイダニアスとプラットーは圧倒的な量の証拠を集め,支配にはステレオタイプ以上のものがあること,ステレオタイプは原因ではなく結果だということを示している。実際彼らは,多くの行動が,自分の集団とともにいたいとか,自分の出自集団をひいきにしたいという欲求に由来するだけでなく,ほかの集団を低い地位にしたまま自分自身の集団をひいきにしたいという欲求にも由来することを示している。人種的なステレオタイプは,ほかの集団のメンバーが真に危険であり,自分たちの集団の連帯の利益を脅かすという直観を解釈するために生み出された表象のひとつである。明らかに,連帯の構造を理解できない理由のひとつは,それらが時に私たちの道徳的基準と矛盾するということである。このことは,なぜ多くの人々が人種差別主義をきわめて効率的な経済的戦略の結果としてよりも,不幸にも方向を誤った概念の結果として考えたがるのかをおそらく説明するだろう。
パスカル・ボイヤー 鈴木光太郎・中村潔(訳) (2008). 神はなぜいるのか? NTT出版 pp.375-376
(Boyer, P. (2002). Religion Explained: The Human Instincts that Fashion Gods, Spirits and Ancestors. London: Vintage.)
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