1960年代から1970年代初め,カリフォルニア大学バークレー校の心理学教授,アーサー・ジェンセンが,知能テストにはマイノリティが不利になるバイアスはなく,マイノリティの成績向上を狙った学校プログラムは失敗に終わるだろうと主張する論文を書き始めた。ハーバード大学心理学教授のリチャード・ヘアンスタインは1971年,アトランティック・マンスリー誌に論文を発表し,米国は急速にマイケル・ヤング型のメリトクラシー社会になりつつあると述べた。すなわち,知能は今や,社会の中でまさにカギを握る資質になっている。知能は遺伝によってかなりの部分が受け継がれる。それゆえ,最も知能の高い人々を全員1ヵ所に集めれば,彼ら同士が結婚するようになり,共通テストと選抜に基づく大学教育がいずれ,高IQの人々で構成される明確な半世襲的上流社会を生み出すと論じた。
ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.248
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