特定受検者の作業曲線から,受検者の行動・性格3特性を主観判定する試みがされてきた。発動性・可変性・亢進性である・それぞれについて簡単に説明する。
1)発動性:前期作業および後期作業の初頭部2〜3行の突出の程度による。突出が適度に大きい場合は,外向的かつ積極的な性格と判定する。反対に,突出の極端に小さい場合は,内向的かつ消極的で非社交的な性格と判定する。
2)可変性:作業経過に伴う曲線の動揺の程度による主観判定である。適当な動揺と変動の場合は,落ち着きがあり親切で情緒的に安定した性格と判定する。反対に,過度の動揺と激しい変動の場合は,気分の変動が激しく自己中心的で情緒的に不安定な性格と判定する。
3)亢進性:前期作業および後期作業の後半部の上昇および下降傾向の程度による。前記の場合は緩やかな上昇傾向が望まれるが,後期の場合は,緩やかな下降傾向が望まれる。前期作業の適度な傾向は終末努力が示唆され勤勉的性格と判定する。後期の激しい下降傾向からは頑張りの利かない怠惰な性格が示唆される。
柏木繁雄 (2018). 内田クレペリン精神検査の客観判定 日本・精神技術研究所 pp. 7-8