ハリーは当初,アカゲザルがどれほど賢いかに気づいていなかった。彼らの適応能力は,いくぶんかは私たち人間と同じように,すばやく抜け目のない知性に基づいている。現在の霊長類研究では,アカゲザルは簡単な計算ができ,シューティングゲームを驚くべき正確さでプレイできることがわかっている。彼らは,ハリー・ハーロウには思いも寄らなかった能力を持っているのだ。だから,ハリーは二重に幸運だったわけである。サルがほんの少ししか手に入らなかったことも,その大半がアカゲザルだったのも幸運だった。そして後になって,愛と絆の研究を進めるときに,彼はまたまた幸運に恵まれるのである。というのも,アカゲザルは私たちと同様,地球上のどの動物よりも強い絆を持つ種のひとつなのだ。ここでもまたアカゲザルのおかげで,ハリー・ハーロウは最適なタイミングで最適な動物を使って実験することになるのである。
デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.139-140
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