人間が知覚する世界は人為的に構築されたものであって,その特性や性質は,実際のデータの産物であるとともに,無意識の精神的な情報処理の結果でもある。自然は,わたしたちが情報の欠落を克服できるようにと,知覚した事柄に気づく前に,無意識のレベルでその不完全さを修正するような脳を与えてくれた。脳はその作業をすべて,子供用高椅子に座って瓶詰めのこしあんをほおばったり,大人になってソファでビールを味わったりしながら,意識的な努力をせずにおこなう。人間は,無意識の心がつくりだした視覚を,何の疑問も持たずに受け入れる。また,それが単なる1つの解釈でしかなく,生存確率を最大限に高めるようつくられていながら,あらゆるケースでもっとも正確な描像ではないことにも,気づきはしない。
レナード・ムロディナウ 水谷淳(訳) (2013). しらずしらず:あなたの9割を支配する「無意識」を科学する ダイヤモンド社 pp.67
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