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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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致死度

 科学的に言えば,「致死度」を測るさまざまな方法がある。もっともよく使われるのは,半数致死量で,LD50と呼ばれる数値だ。LD50は,投与された動物(ラットとマウスがもっとも多いが,さまざまなタイプの毒液を検査するため,ゴキブリからサルまでなんでも使われる)の半数が死ぬ毒素の用量のことである。基本的には,体重1キログラム当たりのミリグラム単位の毒素,すなわちmg/kgで表される。LD50の値は,おおざっぱな効力の見積もりであり,低い値をもつ物質は,微量でも対象を殺せる可能性が高いということなので,きわめて毒性が強いとみなされる。
 たとえば,水のLD50は9万(mg/kg)以上であり,これはふつう無害とみなされるが,一気に6リットル以上も飲んでしまえば,死ぬ可能性もある(それを試すのはおすすめしない)。
 一方,ボツリヌス毒素のLD50は1キログラム当たり1ナノグラムと算定されており,知られているかぎりもっとも致死的な物質の1つである。60ナノグラム,すなわち100億分の6グラムで,平均的な人間を十分に殺すことができるのだ。もし,均等に分けることができるとすれば,一握りもあれば十分に,地球上の全人類を殺すことができる。
クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二(訳) (2017). 毒々生物の奇妙な進化 文藝春秋 pp. 41-42

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カモノハシの毒

 カモノハシは本当に,強烈に恐ろしい毒液動物だ。私の聞いたところでは,深いトラウマを残すような出来事と同じように,カモノハシに刺されるのもまた,人生を変えるような体験であるらしい。カモノハシの毒液は,数時間,ときには数日間にわたって耐えがたい痛みを引き起こす。記録されている症例の一つでは,狩りをしていた57歳の退役軍人が,怪我をしていたか,あるいは病気になっていたカモノハシに躓いた。彼は,その小さな生き物を心配し,持ち上げたところ,右手を刺されてしまった。親切が仇となり,彼は激痛のなかで6日間も入院しなければならなくなった。
 彼の治療に当たった医師たちは,最初の30分間に,合計30ミリグラムのモルヒネを投与したが,ほとんど効果がなかった(ふつうの痛み止めに用いられる量は,1時間当たり1ミリグラムだ)。彼によれば,その痛みは,軍人の時に散弾で負傷したときよりもはるかに激烈なものだったという。医師たちが神経ブロック剤で,手のすべての感覚を麻痺させてはじめて,彼は救われたと感じることができた。
クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二(訳) (2017). 毒々生物の奇妙な進化 文藝春秋 pp. 18

何でも有毒?

 量によっては,どんなものでも毒素になりうる,という話を耳にしたことがある人もいるかもしれない。しかし,これは正確な表現ではない。確かに,十分な量のもとでは毒性をもつ物質も存在するが,人を殺すのに膨大な量が必要なのであれば,その物質は毒素とは言えないのだ。
クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二(訳) (2017). 毒々生物の奇妙な進化 文藝春秋 pp. 16

有毒とは

 ある種が「毒液をもつ」と言うためには,いくつかの条件を満たす必要がある。これまで,「毒液をもつ(venomous)」,「毒がある(toxic)」,「有毒な(poisonous)」は,それぞれ互いに入れ替えても同じ意味で使えると考えられてきたが,現代の科学者たちは区別して使っている。
 まず,「毒がある(toxic)」という言葉は,少量で相当な危害を与えられるような物質(毒素)をもつことを指す。毒液動物(venomous)と有毒動物(poisonous)はどちらも,これに当てはまる。その体組織の中で毒素をつくったり,貯えたりしているからである。
クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二(訳) (2017). 毒々生物の奇妙な進化 文藝春秋 pp. 16

ビッグ・ファイブ

 アップル,アルファベット(グーグルの持株会社),マイクロソフト,アマゾン・ドット・コム,フェイスブックのIT企業「ビッグ5」は,収益力や成長性を反映する時価総額の大きさに加え,データや技術,人材など多方面でニュー・モノポリー(新たな寡占)を形成しつつあるといわれます。デジタル革命の波に乗るこうした巨大企業の文化が,かつて産業界に君臨した巨大企業(たとえばGEやIBM)の文化とかなり異なるであろうことは,容易に想像できます。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 212

銀行の種類

 ちなみに,ウォール街に関する作品の舞台になる金融機関は,主に投資銀行です。銀行の名前がついていますが,投資銀行(investment bank)は,日本の銀行の主な業務である預金・貸出は行わず,主に大企業や機関投資家,政府などを相手に,株式や債券の発行引受けや資金調達・M&Aの助言,さらに市場でも為替を含むディーリング業務などを行っています。商業銀行(commercial bank,日本の銀行のイメージに近い)に比べ,少人数で多額の資金を動かし,従業員の報酬も高いとされます(その代わりスタッフの地位は不安定)。投資銀行と商業銀行では,企業文化がかなり違います。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 189-190

バイアス

 人間の思考には,楽観性のバイアスがあることは,心理学や行動経済学の世界でよく知られています。客観的に物事を判断すると同時に,常に最悪の事態を想定し,結果として何事もなかった,あるいは軽微な影響にとどまったなら,それでよしとする姿勢が大事です。
 後手を踏む,あるいは,対応が不十分だったことがもたらす負の影響は,先手を打つ,あるいは,十分すぎると思われる対応をとることにより,組織内外の注目を集め,それがもたらす負の影響(それゆえ,ことを荒立てたくない,内々で処理したいと思いがちです)よりも,はるかに大きいと考えるべきです。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 169-170

リスク回避型

 グラント教授は,一般スタッフに対して,イノベーションの機会や権限をきちんと与えていないリーダーが多いとします。イノベーションは,特別な才能を持つ人が行うというのは思い込みであって,実際には,ほとんどの人が,斬新な思考や問題解決という点で相当優秀な力を持っており,組織が「調和の押しつけ」を行っていることが,そうした能力の発揮を妨げているというのです。たしかに,私も,学生の一見突拍子もないアイデアに,あとで感心することが,よくあります。普段,調和を押しつけていることはないと,自分では思っていますが。
 そして教授は,起業家の中でも長期にわたって成功しているのは「リスク回避型」の人々であり,そうでない人々(異才)は,華々しく活躍しても短期で終わるとも述べています。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 119-120

ホフステード

 ホフステード指数は,もともと曖昧な概念であった国民性を定量化し,企業文化を考える上で画期的なものであったわけですが,数的,質的な面でサンプリングには議論の余地がありますし,イタリア人的なイメージの日本人もいれば,その逆もいます。その際,国民による行動様式や価値観の違いについて,暗黙理に「正規分布」(平均値を中心にした左右均等の釣鐘状の分布)を仮定し,平均値の距離や分布の重なり具合で異文化論を展開しますが,そもそも各々の集団が,文化的に正規分布かどうかもわかりません。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 106

CAGEフレームワーク

 ゲマワットは,他国市場への進出にあたっては,CAGEフレームワーク,すなわち文化(Culture),政治や行政的制度(Administration),地理的要因(Geography),経済状態(Economics)の4つに分類される,彼我の距離や相違(Distance)をよく認識する必要があると説きます。
 その上で,集約化(Aggregation),現地化(Adaptation),裁定取引(Arbitrage)のいずれかの戦法,もしくはそれらのバランスをとることを勧めます。なお,裁定取引とは,違いを利用して一方から他方に商品やサービスを持ち込むことで,文化的側面では,安心・安全や健康に対する意識が高まっている国に,日本食を売り込むようなことを指します。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 86

後継者不足

 そうした中,同じく「2016年後継者問題に関する企業の実態調査」(サンプルは社長分析と異なる)では,国内企業の3分の2にあたる66.1%が後継者不足で,14年の前回調査に比べ,0.7%ポイント上昇しています。社長年齢が若い企業で後継者が不足なのはわかりますが,60歳代で54.3%,70歳代で43.3%,80歳代でも実に34.7%と,高齢層で驚くほどの高さとなっています。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 68

不変の企業文化はあるか

 ひとついえるのは,少なくとも企業の成長にとって,時代や環境がいくら変わっても有効であり続ける企業文化は,(ないとはいえないが)あまりなさそうであること,必要に応じ文化も変われることが,長く成長を続ける上で有効でありそうなことです。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 51

声が大きい人

 ちなみに,雇用の流動化促進を積極的に唱える論者には,大学教授やエコノミストなど,「その世界」での流動化に対応できる人や,すでに成功している人が多いように思いますが,偏見でしょうか。
植村修一 (2018). “社風”の正体 日本経済新聞社 pp. 21

派手な宣伝

 だが今日では,派手な宣伝をすることがベンチャーキャピタルビジネスの要になった。新たな企業がたくさん生まれ,新たな資金がふんだんに流れ込む中,ベンチャーキャピタルも,注目を集めなくてはとプレッシャーを感じているのだ。だからスタートアップ企業のようなおかしな動画をつくり,広報担当者を雇い,ブログやポッドキャストを立ち上げて,元ジャーナリストを雇って運営させる。毎年,シリコンバレーで大金を稼いでいるのは,一握りの企業だけだ。ベンチャーキャピタルたるもの,そうした企業にお金を預けなくてはならない。だが,そんな契約に至るのは,簡単なことじゃない。投資家は実のところ,おいしい契約を目指して,競い合わなくちゃいけないのだ。どうすればあの起業家にお金を受け取ってもらえるだろう?どうすれば目立つだろう?それには,話題づくりが必須だ。
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 284

ルール軽視

 スタートアップ企業は,「ルールを曲げてもいい」と思い込んでいるふしがある。ウーバーやエアビーアンドビーのように,規制に逆らうことでビジネスを構築してきた会社もある。だから,法律がバカなのに,何で従わなくちゃいけないの?というわけだ。スタートアップ企業に言わせれば,「IT企業が近道をするのは,大義のため」なのだ。
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 245

差別と証明

 どんな差別でも同じだが,腹立たしいことの一つは,それを証明するのが,無理とまでは言わないが,たいてい難しいことだ。偏見とは往々にして,さりげない,無意識の行為だから。ハブスポットの人たちが年齢差別を話題にすることはほとんどない。あったとしてもそれは,年配の労働者が冷遇されている,という話じゃない。彼らが口にするのは,20代前半の社員が,若いからといって責任を与えてもらえないのはひどい!という話だ。
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 233

日本的では?

 多くのIT企業は社員を粗末に扱っておきながら,忠誠心を求め,雇用主に対してスポーツファンがチームに抱くような愛情を示してほしいと期待している。ハブスポットの社員は,「会社のニーズは,あなたのニーズより大切だ」と聞かされる。「チーム>個人」という表現で,ダーメッシュはそれをカルチャーコードの中で示し,コードには「われわれが愛する会社をつくる」というサブタイトルをつけた。でも,いったい誰が,会社と恋に落ちるというのだ?「私達は家族じゃない」なんて言われながら。
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 185

大事なのはビジネスモデル

 そしてもう一つ,私が新しい仕事で学んでいることがある。それは,いまだにこのビジネスは「テクノロジー業界」と呼ばれているが,実のところ,もはやテクノロジーが主役ではない,ということ。「素晴らしいテクノロジーを開発すれば報われる,という時代は終わった」というのは,ある友人の弁だ。彼は1980年代からこの業界で働いてきた元投資銀行家で,今はスタートアップ企業に助言している。「大事なのはビジネスモデルさ。市場は,一気に大きくなる企業の創業者にお金を払う。大事なのは,速く大きくなること。もうけるな,ひたすら大きくなれ,とね」
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 179

電話営業

 ところが実際は昔ながらのコールセンターを運営し,薄給の若者を大量に雇って,来る日も来る日も何千本もの電話をかけさせている。ハブスポットはこの部屋を内緒にしているわけじゃないが,大っぴらに語るわけでもない。愛すべき,魔法のような,1足す1を3にしてくれる場所——じゃないことはたしかだ。真実を言おう。IT企業の大半が,電話営業もしている。理由は単純,安いからだ。年商400億ドルのソフトウェア企業,オラクルだって,何千人もの大学生を雇ってコールセンターに詰め込みだした。販売コストを下げるために。
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 155

バカの増発敵増加

 アップルのCEOだった,スティーブ・ジョブズはよく「バカの爆発的増加」と呼ばれる現象について語っていた。つまり,初期の頃から会社にいる二流社員が昇進し,部署を統括するようになると,バカが社員を採用しなくちゃいけなくなる。バカはもちろん,バカを採りたがる。アップルでジョブズと働いたガイ・カワサキは,次のように述べている。「B級プレイヤーは,優越感を覚えたいからC級プレイヤーを雇う。そして,C級プレイヤーはD級プレイヤーを雇う」。これがバカの爆発的増加で,過去7年間にハブスポットで起こったことに違いない。
ダン・ライオンズ 長澤あかね(訳) (2017). スタートアップ・バブル:愚かな投資家と幼稚な起業家 講談社 pp. 124

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