空間を区画に分けるのは,私たちが頭の中で空間を考えるときの基本である。非常に曖昧な空間を使った実験でも,その効果の大きさが示されている。たとえばある実験では,被検者はコンピュータのスクリーン上に不規則に並んだ物体の位置をおぼえるよう指示される。するとたいていの人は頭の中で,目に見える物体の位置に基づきスクリーンをいくつかの区画に分ける。そのため物体同士の距離について尋ねられると,同じ区画の中にある物は,区画の外にあるものより近くにあるように感じてしまう。シアトルとモントリオールのどちらが北にあるかを尋ねられたとき,カナダはアメリカより北にあるので,モントリオールのほうが北にあると思ってしまう。リノがロサンゼルスより東にあると思うのは,ネバダ(の一部)がカリフォルニアより東にあるからだ。
コリン・エラード 渡会圭子(訳) (2010). イマココ:渡り鳥からグーグル・アースまで,空間認知の科学 早川書房 pp.129-130
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