忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

プレザント・アイランド

 1798年11月8日,イギリス人ジョン・ファーン(John Fern)船長率いる捕鯨船ハンター号がナウルに接近した。すぐに数席のカヌーが偵察にやってきた。驚いたハンター号の乗組員は船から離れず,ナウル人も小舟に乗ったままであった。だが,ナウル人からは,敵意はまったく感じられなかったという。これこそナウル人とのファースト・コンタクトである。ポリネシア諸島に滞在経験のあったジョン・ファーンは,ナウル島民の体に,ポリネシア人のようなイレズミがないことに気づいた。数百人のナウル人がイギリス船の後をついてきた。このファースト・コンタクトに感動したイギリス人船長は,この島を「プレザント・アイランド(快適な島 Pleasant Island)」と命名した。この島は,おそらく数十年の間,他のヨーロッパ人とコンタクトを持つことがなかったと思われる。

リュック・フォリエ 林昌宏(訳) (2011). ユートピアの崩壊 ナウル共和国:世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで 新泉社 pp.31
PR

来るのか来ないのか

 マヤ文明の暦には2012年12月22日までしか記載がないとし,それに結びつけて12月23日に人類が滅亡すると明言する人もいる。いずれにしても,みんな言っていることがはっきりせず,2012年に何が起こるのかは,やっぱりよくはわからない。
 こうした話を聞くたびに,1999年に人類が滅亡するといった「ノストラダムスの大予言」を思い出す。私も予言に振り回されたひとりだが,結局,何も起きなかった。当時は世の中に終末思想が蔓延し,ブームに乗じて現れたさまざまな狂信的団体が人と金をかき集めた。2012年に天変地異が来るのか,来ないのか。それとも他の何かが起きるのか。それはわからない。だが,このブームにつけこんで金を儲けようとする人間が出てくることだけは間違いない。

多田文明 (2009). クリックしたら,こうなった メディアファクトリー pp.174

架空名義

 なぜ,架空の業者名を出してサイトの運営をするのか?それには大きく分けて2つの理由が考えられる。ひとつは,架空の会社を立ち上げて架空のアルバイトを雇い,それをもとの会社の経費として計上する。つまり脱税目的である。過去にもこの手口で脱税を行って摘発された出会い系サイト業者がいる。
 もうひとつは,架空の会社にすることで,被害に遭った人の返金請求をかわすためだ。記載の住所に会社がなければどこに交渉してよいかわからず,たいていの被害者は諦めてしまうだろう。業者はそれを狙っている。

多田文明 (2009). クリックしたら,こうなった メディアファクトリー pp.48-49

知っておくこと

 振り込め詐欺の被害を防ぐには,彼らがどんな手口でやってくるか,その手口をあらかじめ知ることで防ぐことができる。金を要求する怪しい電話がかかってきても,「このパターンかもしれない」と思うことで冷静に対応できるのだ。
 ここまで被害が広がった理由のひとつに,警察が詐欺手口の公表を手控えたことにある。おそらく,手口を公にするとそれをマネした犯罪が増えると考えたのかもしれない。だが,詐欺の実態を知らせないことで逆に被害は広がった。裏社会ではこうした金になる詐欺情報はすぐに伝わり,多用される。警察が公開しようとしまいと,こうした詐欺は水面下ですでに伝わっているものなのだ。ちなみに,新聞などからの安易な情報だけを得て,マネしたまぬけな詐欺師はすぐに捕まっている。
 実際,被害情報をオープンにすることで,社会全体が危機感を持ち,振り込め詐欺,架空請求は沈静化に向かってきている。被害の情報公開は誘拐などのように命の危険がある場合は別だが,私は新手の詐欺の場合はできるだけ早めにオープンにすべきだと思っている。

多田文明 (2005). 電話に出たらこうなった! 大洋図書 pp.160-161

キッパリ断る

 かかってきた勧誘電話に対しては,キッパリと断る必要がある。私のように「今のところは,結構です」などあいまいな言い方で断ると,「まだ落とせる(騙せる)余地あり」と彼らは考える。その顧客情報は業者間を巡り,電話が頻発するようになる。

多田文明 (2005). 電話に出たらこうなった! 大洋図書 pp.90

団体名に弱い

 日本人はこうした権威ある団体名に弱い。◯◯協会や◯◯団体のお墨つきだから安心,と思ってしまうけれど,必ずしもそれがそのまま勧誘会社の信頼度を示すとは限らない。
 シスアド勧誘の男性は「ここの協会員になっている」と,自社の健全性を訴えた。それどころか,この協会のお墨つきを利用して商売をしているフシさえ見受けられた。もしかすると,先に摘発された英会話教材会社も同等の手口で契約を迫っていたのかもしれない。
 今回はある協会を利用している例だが,最近の悪質な勧誘会社はこぞって,会社内部に苦情センターを置く傾向がある。一見,これは企業の自浄努力に見えるが,そうではない。その会社の勧誘被害が消費者センターなどの外部にもれないようにするための方策なのである。身内で固めた苦情センターにかけさせることで,勧誘被害者を自分たちの都合のいい方向に誘導していく。
 それゆえ強引な勧誘でいやな目にあったら,彼らの指定する苦情先だけではなく,消費者センターなどの第三者機関にも相談することを忘れてはならない。

多田文明 (2005). 電話に出たらこうなった! 大洋図書 pp.80

マインドコントロール4原則

 ジム・ジョーンズのような人物がおこなうマインドコントロールには,催眠術による昏睡状態や,暗示にかかりやすい人につけ込む行為は含まれていない。そこに働いているのは4つの原則だ。
 1つは,段階的に少しずつ帰依の度合を深めていくこと。カルト教団のリーダーは相手に対して最初の1歩を踏み入れると,しだいに要求を強めていく。そしてふと気づくと,信徒はどっぷり教団にはまり込んでいる。2つ目は,グループから不協和音をすべて排除すること。懐疑的な者を排除し,グループはしだいに外界から孤立していく。そして3つ目は奇跡の力。カルト・リーダーは不可能を可能にするかのように見せかけることで,自分は神と直接つながっている,だから疑いをいだいてはならないと人々に思い込ませる。4つ目は,自己正当化である。人に奇妙な儀式や苦痛を伴う儀式を強いるグループは,敬遠されるはずだと思うかもしれない。だが実際には,その逆である。これらの儀式に参加した信徒は,自分の苦しみを正当化するために,このグループには価値があると前向きに捉えるのだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.245-246

幽霊体験をする人

 フーランは,暗示にかかりやすい人は自分が幽霊屋敷にいると思うだけで,絵に描いたような幽霊体験をしてしまうのではないかと考えた。しかもその体験で恐怖心をあおられ,過剰警戒をし,ちょっとしたことでもきにしはじめる。彼らは床板がかすかにきしむ音,ゆらぐカーテン,なにかが燃えるような匂いに突然敏感になる。おかげでますます恐くなり,さらに警戒心が強まる。こうして感情が雪だるま式にふくれあがり,動揺し不安に襲われたあげく,極度の興奮状態になり,妄想を抱きがちになるのではないか。
 数多くの実験結果が,フーラン説を支持した。私自身の実験でも幽霊を信じている人のほうが,信じていない人よりも,奇妙な体験をする割合がはるかに高かった。そしてその不思議現象は,ホラー映画によく登場する,見た目が不気味な場所で起きることが多かった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.

眠りの間

 脳のからくりは,あなたに幽霊の残像を見たと思い込ませることもあれば,邪悪なものと遭遇したと思わせることもある。睡眠の第1段階からレム段階へと移行するあいだに脳が混乱し,第1段階の半睡半醒時の幻覚,性的興奮状態,レム段階の麻痺状態を同時に体験する場合があるのだ。この恐るべき組合せの結果,あなたは重いものが自分の胸の上に乗って動けなくなったように思い,邪悪な存在を感じる(それが見えるように思う場合もある)。そして,自分が奇妙な性交をおこなっているような感覚を抱く。
 何世紀も前から,自分が悪魔や異星人に襲われたと思い込む人はかなりいた。睡眠学者は,こうした体験の裏にある真実を解き明かしたと同時に,あなたの寝室から邪悪なものを追い払う最良の方法も見つけだした。当然のことながら,その方法は祈祷を唱えたり,聖水を撒いたり,大がかりな悪魔払いをおこなったりすることではない。じつのところ,方法はいたって簡単である。指を屈伸させるか,まばたきをするだけでいいのだ。ちょっとでも体を動かせば,あなたの脳はレム状態から睡眠の第1段階へ切り替わる。そしてあっという間にあなたははっきり目覚め,現実の世界へぶじもどることができる。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.190

自動書記のカラクリ

 ウェグナーは,人によって「脳が決断を下し,その決断にもとづいて意識的な行動が作りだされる」というメカニズムがうまく機能しない場合があると考えた。脳が行動について決断を下し,しかるべき筋肉にメッセージを送るのだが,決断を下したのは「自分」だという意識を作りあげるのに必要な信号が,うまく送られないのだ。その結果自動筆記では,筆記がおこなわれても筆記者は書いているのが自分だと思えない。ウェグナーは,この現象が自由意志の根本的な性質について,貴重でユニークな手がかりをあたえると考えている。この発作が起きているあいだにふと我に返った筆記者は,自分が自分のロボットになったような感覚をもつ。児童筆記は怪しげな見せ物ではなく,私たちの日常行動の奥にひそむ真実をあらわすものなのだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.166

「自分」が

 だがとっさの行動では,この行程が誤認識される。ここで,ある行動を試してみよう。あなたはこの文章を読み続けてもいいし,お茶を飲んでもいい。どちらを選んだ場合も,あなたには脳の動きが感じられないはずだ。突然前頭部で血流の勢いが増すのを感じたり,続いて左脳が活発に動き出すのを感じたりはしないだろう。そこであなたは,左右の耳のあいだに詰まった肉のあいだを走る電気的な力がではなく,“自分が”決断を下したという感覚をもつ。
 この謎について,ウェグナーは理にかなった賢明な答えをだした。“自分”が決断を下したという感覚は,じつは脳が作りだす幻想だと考えたのだ。ウェグナーによると,日々の暮らしの中で,立ち上がる,言葉を話す,腕を振り回すなど,脳はあらゆる行動について決断を下す。だが,決断を下した直後に脳は2つのことをする。1つは,決断を意識化する部位に信号を送ること,もう1つは,足や口や腕に送る信号を遅らせることである。その結果,“あなた”は,「自分がたったいまこの決断を下した」という信号を意識し,自分がその信号と矛盾しない行動をとったことを確認し,すべてを動かしているのは“自分だ”と誤って思い込む。
 言ってみれば,あなたは運転席にいる幽霊なのだ

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.162

反動効果

 ウェグナーの反動効果は,さまざまな場面で働く。不幸なできごとを忘れなさいと言われると,かえってそのできごとを忘れられなくなる。ストレスになることは考えないようにと言われると,かえってそのできごとを忘れられなくなる。そして不眠症の人に眠れなくなるようなことは考えないようにと言うと,かえって眠れなくなる。
 ウェグナーは,テーブル・ターニングやウィジャ・ボードで,指を動かすまいとしてもテーブルやブランシェットが自然に動き,霊からのメッセージを受け取れるのも,同じ現象で説明できるのではないかと考えた。反動効果は,運動面にも働くのではないか。ある行動をしないように頑張ると,かえってその行動をしてしまうのではなかろうか。
 ウェグナーは観念運動のもう1つの代表例を使って,実験をおこなった——振り子である。何世紀も前から,人びとは糸に結んだ小さな重りを左右に振ったり,円を描くように回したりして,生まれてくる赤ん坊の性別を知り,未来を占い,霊と交信してきた。ウェグナーは被験者を1人ずつ研究室に招き,レンズを天井に向けて設置したビデオカメラの上で,振り子の糸をもってもらった。被験者の半数には振り子を動かしてはいけない方向を1つ指示し,もう半数には振り子をできるだけ動かさないように頼んだ。
 撮影されたフィルムを見ながら,ウェグナーは振り子の動きを精密に計測した。すると,白くまのことを考えないように言われると白くまのことばかり考えてしまうのと同様,振り子を動かすまいとすると,かえって振れ方が激しくなっていった。この無意識の運動は,被験者に6桁の数字を記憶する,1000から3ずつ引き算する,などであらかじめ頭を働かせてもらうと,いっそう激しくなった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.157-158

見逃し

 数多くの実験で,くり返し同じことが実証されている。人は誰でも,自分を正確な目撃者と考えたがる。だが実際には,私たちは目の前で起きたできごとを無意識のうちに誤って記憶しがちであり,だいじなディテールを見すごすことが多い。
 私たちの脳は,自分が置かれている環境の中で,どの部分に最も注目すべきか,目の前にあるものを認知する最良の方法はなにか,たえず模索を続ける。たいていの場合,脳の判断は正しい。だからこそ人は効率よく効果的な方法で,世の中を的確に認識できるのだ。だが時折あなたは,この優秀な脳の働きをつまづかせるものに遭遇する。視覚の錯覚は,あなたの目を完全にあざむく。
 そして“超能力者”は,マジックのごく初歩的なトリックで,あなたに奇跡を目撃したと思わせる。彼らはいかさまの可能性を考える隙をあたえないよう,あなたの虚をつく巧妙な手を使い,トリックの証拠を即座にあなたの記憶から消し去る。
 そう考えながら眺めると,鉛筆回しもスプーン曲げも奇跡のあかしではなく,あなたの目と脳がいかにうまくできているかを,如実に物語るものなのだ。こうした技を披露する人物は,たしかに驚異的な力の持主である。だがその偉力は超自然的なものではなく,心理的なものだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.128-129

手間をかける

 ふつうの人はあまり知らないが,マジシャンや“超能力者”は,実際に技を披露するまでに,準備にたっぷり時間と労力をかける。イギリスのマジシャン,デイヴィッド・バーグラスの例をご紹介しよう。
 彼はロンドンの裕福な銀行家が住む3階の部屋に招かれて,技を披露することになった。バーグラスは銀行家から空の牛乳瓶を借り,それに長い紐をくくりつけ,部屋の窓からゆっくり下へ降ろした。
 つぎに彼は果物のボウルから梨を1個とり,どこかへ消してしまった。そして銀行家に,紐を引っ張って牛乳瓶を引き上げるように頼んだ。引き上げてみると,なんと瓶の中にその梨が入っているではないか。瓶の口からは,絶対に入らない大きさの梨である。
 いかにもその場での即興に思えるこの手品の裏には,長期にわたる計画がひそんでいた。何ヵ月も前にバーグラスは梨の木に若い小さな実を見つけ,その枝の1本を空の牛乳瓶に入れた。時間とともになしは瓶の中で大きくなり,それが一見常識ではありえない手品の小道具になった。
 実行するにあたって,バーグラスは助手にあらかじめ表に出ていてもらい,3階から降ろした牛乳瓶を,梨が入った牛乳瓶と交換させた。そのようにして,彼は手品がはじまったのはほんの数分前と信じ込んでいる客たちをだましおおせたのだった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.116

信じる者は

 1980年代のはじめに,カリフォルニア州立大学の心理学者バリー・シンガーとヴィクター・ベナッシが,有名な実験でこの原則の威力を実証した。シンガーとベナッシはクレイグという若いマジシャンに,紫の衣にサンダル,そして大袈裟なメダルを着けさせ,学生グループの前でマジックを実演してもらった。実験者は片方のグループにはクレイグをマジシャンと紹介し,もう片方のグループには本物の霊能者と紹介した。どちらの場合も,クレイグは読心術や金属曲げの技をふくむ簡単な手品をいくつか披露しただけだった。終わったあと,実験者は学生全員にクレイグに超能力があると思うか訊ねた。すると「クレイグは霊能者」と紹介された学生の77パーセントが,正真正銘の超能力を見たと答えた。それ以上に驚くべきは,「クレイグはマジシャン」と紹介された学生の65パーセントも,彼を超能力者と答えた点である。心のなかでありえないことに対する受け入れ態勢ができている人たちには,紫の衣,サンダル,メダルが大いに効果を発揮するようだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.106-107

一卵性は…

 ブラックモアは初期の研究で,超常現象を語る場合かならずといっていいほど取り上げられる問題に挑戦した——一卵性の双子はなぜおたがいに霊感が働くように見えるのか,という問題である。超能力の支持者は,その不思議な絆をテレパシーだと思いたがる。かたや懐疑派は,一卵性双生児は同じ環境で育ち,遺伝子型も同じという共通点があるので考えることも似てくる。それでたがいの心が読めるかのように見えるのだと主張する。
 この問題に決着をつけるため,ブラックモアは6組の双子と6組の兄弟姉妹を集め,2部構成の実験をおこなった。実験の第1部は,ずばりテレパシーのテストだった。双子ないし兄弟ペアの片方にテレパシーの「送り手」役を,もう片方に「受け手」役を頼んだ。送り手には自分が無作為に選んだ内容(1から10までの数字,物体,写真など)を,受け手へ念力で送ってもらった。だが結果的に,双子ペアにも兄弟姉妹ペアにも,テレパシーが働いた形跡はみられなかった。
 実験の第2部で,ブラックモアは送り手に1部とはちがう作業を頼んだ。最初に頭に浮かんだ数字を送ること,好きな絵を描くこと,4枚の写真の中から送りたい写真を1枚選ぶことをである。すると,結果が突然変化した。「双子は共通点が多いのでテレパシーが働く」説の予言どおり,双子の答えが急に一致しはじめたのだ。たとえば,1から10までのあいだで数字を思い浮かべるように頼んだところ,双子の2割が,同じ数字を答えたのに対し,兄弟組で答えが一致したのは5パーセントのみだった。絵のほうでも,内容が一致したのは双子が21パーセント,兄弟は8パーセントだった。つまりこの実験によると,双子にテレパシーが働くように見えるのは,双子同士の考え方や行動が非常に似ているためで,超能力ではないのだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.81-82

21グラム

 マクドゥーガルの発見が1907年に『ニューヨーク・タイムズ』に掲載されたとき,みずからも医師であるオーガスタス・P・クラークが,舞台に登場した。彼は,人が死ぬ瞬間には肺が血液を冷やせなくなるため体温が急激に上昇する。その結果生じた発汗がマクドゥーガルの言う21グラムの体重減少につながったことは,容易に想像がつくと指摘した。クラークはまた,犬には汗腺がない(そのためいつも口をハアハアさせて放熱する)ので,死の瞬間に体重が変化しなかったのも当然であるとした。そんなわけでマクドゥーガルの発見は,「事実でないのはほぼ確実」というレッテルとともに,科学界の下手物の1つとして片付けられることになった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.65

コールドリーディング

 コールドリーディングの手法を理解すれば,占い師が科学的な実験で能力を実証できない理由も見えてくる。客から遮断されると,占い師は相手の服装やしぐさから情報を集めることができない。そして実験の参加者たちに全員の占い結果を見せてしまうと,参加者は占い師の言葉にみずから意味づけする機会をあたえられていないため,自分に対する占い結果と,ほかの参加者に対する占い結果を識別できない。そこで占い師の日頃の実績はもろくも崩れ,事実が浮かび上がる——彼らの成功は心理学のみごとな応用のおかげであり,超能力のせいではないのだ。この裏技を知ると,占い師に実際に見てもらうときや,テレビで占いを目にしたときに,受け取り方がこれまでとはがらりと変わってくるはずだ。音楽ファンがモーツァルトやベートーベンの音色を楽しむように,あなたは占い師の探りの入れ方や,話の広げ方,客自身に考えさせる話法などに耳を傾けはじめるだろう。
 演奏会を,お楽しみください。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.57

外れたときは

 ミスターDがエディンバラ大学で占いを披露したとき,彼の占いがはずれたと表立って口にした参加者は1人もいなかった。だが,はずれた例はたしかにあった。そんなとき,占い師は失敗を目立たなくいするための“抜け道”をいくつか用意している。最もよく使われるのは,はずれだった内容を広げていく方法だ。たとえば,「ジーンという名前の人を感じます」が当っていなかった場合は,「ジーンでなければ,ジョーンか……ジャックかもしれない。Jではじまる名前,いや,ひょっとするとJに近いアルファベットの,Kかもしれない。カレン?ケイト?」
 あるいは,客自身にもう1度よく考えてみるように頼んだり,あとで家族に聞けば答えが見つかるかもしれないと言ったりして,自分以外の誰かに問題の解決をゆだねる方法もある。そしてもう1つは,「私が言ったのは,たとえです」という抜け道である。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.51-52

曖昧な言葉

 この単純な作用が,占いが当たる理由も説明してくれる。占い師や霊能者が口にする言葉はあいまいなので,何通りにも解釈できる。たとえば,占い師が「住まいについて大きな変化」と言った場合,その意味としては自宅の引っ越し以外に,知り合いの転居に手を貸す,家を相続する,自宅から下宿に移る,海外に別荘を買う,などいくつも考えられる。また,この言葉には時間的な表現が含まれていないので“変化”の時期は近い過去,現在,未来のいずれとも受け取れる。見てもらう側は,占い師の言葉に意味を見つけようと懸命に努力する。自分の人生を振り返り,言われた言葉にあてはまるできごとを探しだす。そして占いが当たったと,自分に言い聞かせる。このプロセスは,実際の占いに入る前から働きはじめる。たいていの占い師が,占いの言葉は完全な形をとらないことを,客にあらかじめわからせておく。くもりガラスを通して見るようなもの,あるいは暗闇で声を聞くようなものだと断りを入れるのだ。あいまいな部分を埋めるのは,客自身の力である。そのうえで占い師は,フォックス博士やイライザと同じように,意味のない言葉を口にする。それをうるわしい事実に変えるのは客自身なのだ。研究者のジェフリー・ディーンは,この現象を「プロクルステス効果」と名づけた。プロクルステスとは,自分のベッドの大きさに合わせて泊まり客の手足を強引に切り落としたり,引き伸ばしたりするギリシア神話の人物である。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.38-39

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]