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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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ブラック学校

 ワンマン社長の中小企業に入ってしまったと後悔しました。教員といえば,安定して楽で,高給で……,なんてイメージもあるかもしれませんが,私立高校は中小企業と同じで待遇は千差万別なんですよ。後から知ったのですが,私が勤務していたS高校は,教員志望者間では有名なブラック学校でした。

恵比寿半蔵 (2001). 就職先はブラック企業:20人のサラリーマン残酷物語 彩図社 pp.47
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学校制度の目的は

 百年ほど前のフランスの社会学者によれば,あらゆる制度の暗黙の目的は,生き残り,発展することであって,それが名目としている使命を果たすことではない。つまり,政府の郵便事業の第一の目的は,郵便物の配達ではなく,その職員を保護し,彼らの中で比較的野心のある者に適度な出世の機会を与えることである。また,国防省の第一の目的は,国家の安全保障ではなく,その職員に配分する国富の一部を確保することである。
 そう考えると,学校という制度の目的は,子どもの教育ではなく,教師の保護ということになる(古代ギリシアの時代に,ソクラテスがソフィストを激しく非難したのは,そこに実利主義が潜んでいたからだ)。

ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.128

信者か同志か

 かつてケネディ大統領は,「国が諸君に何をしてくれるかではなく,諸君が国のために何ができるかを問うてほしい」と言った。これはまさに,大衆としての「諸君」と,きわめて抽象的な存在としての「国」との力関係を示したものであり,「国家」の要求が「家庭」の要求に勝るという政治哲学を表現したものである。もしあなたがこの考えに抵抗を感じないなら,あなたもその哲学の信者ということであり,現在の学校制度はうまく維持されるだろう。しかし,もし自分や自分の家庭が国家の付属物であることに抵抗を感じるなら,私たちは同志だ。もうこれ以上,学校を増やしてはならない。

ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.124

マイナス面もある

 現在の学校制度を支持する人々は,たいてい制度全般を支持し,そのプラス面だけを見て,マイナス面を見ようとしない。だが,制度というのは,たとえ良いものであっても,地域や家庭から活力を奪うものである。それは社会の問題を機械的・事務的に解決しようとするが,根本的な解決のためには,自己形成や自己発見,協調性といったものをじっくり育てていく必要がある。

ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.115-116

人間形成に有害

 アメリカの学校教育の目的は,子どもたちに勉強を教えることではない。学校は,秘密の計画経済と意図的につくられたピラミッド社会に奉仕するもので,子どもや家族のためのものではない。学校は,子どもが初めて組織化された社会を知る場所であり,概して,そうした第一印象はずっと続く。学校生活は単調で,退屈で,消費だけが唯一の慰めになる。つまり,コーラやビッグマック,最新流行のジーンズといったところに,現実の意味が見出されるのであり,それが授業の内容である。
 義務教育が健全な人間形成に有害であることは明らかだ。教室での仕事は大した仕事ではなく,生徒の真の欲求を満たすものではない。それは子どもたちの経験から生じた疑問に答えるものでもなく,実生活で遭遇するどんな問題の解決にも役立たない。教室での仕事を本人の望みや経験,疑問,問題とは無関係にすることで,学校は生徒を無関心にさせようとしている。

ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.82-83

子ども=人的資源

 1900年以降,学校は非人間的な場所になっていった。そこでは,子どもたちは「人的資源」と見なされた。この言葉を耳にするとき,あなたの前には,第4の目的にかなった。多くの労働者がいるはずだ。それまでのアメリカでは,子どもは個性や自立を期待されて育ったが,人的資源としての子どもたちは,「職場」に合わせて形作られることになる。
 その職場とは,ほとんどの場合,大企業や主要政府機関である。

ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.63

従うこと

 30年の教師生活をとおして,私はある興味深い現象に気づいた。学校は,世の中の創造的活動から取り残されている。もはや科学者が科学のクラスから生まれるとか,政治家が公民のクラスから生まれるとか,詩人が国語のクラスから育つなどと思っている人はいない。
 実際,学校は命令に従うことしか教えていない。優しく,思いやりのある多くの人びとが,教師として,助手として,管理者として働いているにもかかわらず,彼らの努力は学校の抽象的な論理に押しつぶされている。教師たちが奮闘する一方で,学校は精神病にかかったかのように,分別のかけらも示さない。学校がチャイムを鳴らすと,詩を書いていた生徒はノートを閉じ,別の教室へ移動して,今度は進化論を覚えなければならないのである。

ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.44

知的な依存

 5つ目の教育方針は「知的な依存」である。子どもたちは,何事も自分で判断せず,教師の指示を待つように教えられる。彼らが何を学ぶべきか,彼らの人生に何が必要かなど,重要な判断はすべて専門家が行なう。専門家とは,私のような教師であったり,その背後にいる「影の雇い主」であったりする。実際,こうした判断はむしろその雇い主の仕事で,私の仕事は彼らの命令を実行し,逸脱者を罰することだ。学校にとって,優等生と劣等性の違いは,こうした思考のコントロールがどれだけ行き届いているかによる。

ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.26-27

無関心

 3つ目の教育方針は,「無関心」である。私は,たとえ子どもたちが何かに興味を示しても,あまりそれに夢中にならないように教える。そのテクニックはじつに巧妙だ。まず,私は念入りに計画を立て,子どもたちを私の授業に熱中させる。彼らは興奮して立ち上がったり,私に褒められようと活発に競争したりする。教室が熱気に包まれるのを見るのは嬉しいもので,生徒はもちろん,私までもが気分が高揚する。しかし,いったんチャイムが鳴ると,子どもたちにはそれまでやっていたことをすべて中止させ,ただちに次の授業の準備をさせる。彼らは電気のスイッチのように,素早く頭を切り替えなければならない。私のクラスでも,他のどのクラスでも,重要なことは何一つやり遂げられたことがない。生徒たちがまともにやり遂げるのは学費の納入くらいのものだ。

ジョン・テイラー・ガット 高尾菜つこ(訳) (2006). バカをつくる学校:義務教育には秘密がある 成甲書房 pp.24

動物磁気

 ヒステリーの歴史の中で忘れてはいけない人物が,ドイツの医学者メスメルです。1734年生まれのメスメルは「動物磁気」の概念を提唱し,それによって今日のヒステリーに相当する患者の治療を実践しました。 
 治療において,メスメルは患者の前に膝が触れあうくらいの距離で座りました。両手で患者の両方の親指を押し,患者の目をじっと見たのです。メスメルは患者の肩から腕に沿って手を動かし,それから患者の上腹部を指で押して長時間そこに手を置きました。多くの患者たちはこの「治療」によって奇妙な身体感覚を覚え,けいれんを起こして治癒したといいます。メスメルのもとに,患者が殺到しました。
 このようなメスメルの「動物磁気」による治療が催眠術の発見につながり,さらに後の時代のフロイトによる「精神分析」に発展しました。

岩波 明 (2011). どこからが心の病ですか? 筑摩書房 pp.110

PTSD概念の濫用

 PTSD(外傷後ストレス障害)は,手あかのついた病名になってしまいました。芸能タレントやマスコミの一部,さらには精神医学,心理学の関係者までが,この病気を「誤用」「悪用」したため,胡散臭さが付きまとうようになりました。
 PTSDとは,災害,戦争,犯罪などにより危うく死に至るような出来事を体験した結果,何度もその場面を想起するとともに(これをフラッシュバックという),不安や恐怖感が持続し,睡眠障害,集中困難などがみられる疾患です。またきっかけとなった出来事と関連した場所などを避けるようになります。
 PTSDを引き起こす侵襲的な出来事を体験すると,まず「情動麻痺」という症状がみられ,現実感を喪失し感情を失って茫然とした様子となります。外部からの問いかけに対しても,ほとんど反応を示さないこともあります。この状態を「急性ストレス障害」と呼びますが,このような状態が数日から数週間持続した後に,PTSDに移行することが一般的です。
 元来のPTSDは,戦争と関連して出現した疾患です。二度の世界大戦から,戦争が人間の精神を破壊することが明らかになりました。それは「戦争神経症(シェルショック)」と名づけられました。現在でもPTSDのもっとも重大な原因は戦争とテロです。
 これに対して日本においては,PTSDの概念は「卑小」な形で拡大解釈されました。「親からいつも叱られていた」「恋人から怒鳴られた」という程度の体験を「トラウマ」であると主張し,自らPTSDであると主張して精神科を受診する人は少なからずみられます。また一部の精神科医や心理士は,患者の生活史の中の「トラウマ」探しに熱心でした。

岩波 明 (2011). どこからが心の病ですか? 筑摩書房 pp.100-101

偽のうつ病

 一時,「新型うつ病」という用語がもてはやされました。これは,医学的に明確な定義は示されていませんが,「うつ病で休職中であるにもかかわらず,海外旅行に出かけたり,自分の趣味の活動には積極的な人」や「うつ状態を訴えるが,自責感に乏しく,何かと会社とトラブルを起こす社員」などを指すということです。
 この「新型うつ病」は,「うつ病」ではありません。精神疾患とも言えない場合が多いと思われます。うつ病の診断には,「うつ状態」が持続的にみられることが必須です。場面によってうつ状態を使い分けできるものは,そもそもうつ病とは呼べません。新型うつ病について述べている書籍や論文は,医学的に信用できるものではないのです。
 このような「偽」のうつ病患者は,ジャーナリズムの影響もあって,最近の日本において蔓延しています。彼らは,しばしば自らの「病気」を利用します。あるいは自らの利益のために,病気と称するのです。 

岩波 明 (2011). どこからが心の病ですか? 筑摩書房 pp.44-45

うつをもたらす障害

 うつ病以外にうつ状態を示す疾患としては,「気分変調症(抑うつ神経症)」「適応障害」「パーソナリティ障害」に伴ううつ状態などがおもなものです。拒食症,過食症などの「摂食障害」においても,うつ状態がみられることはまれではありません。

岩波 明 (2011). どこからが心の病ですか? 筑摩書房 pp.31

幻覚・妄想

 たとえば,近くに誰もいないにもかかわらず,自分を非難したりバカにしたりする声が聞こえてくるという現象が「幻聴」です。幻聴は,幻覚の一種です。
 またとくに理由なく,見知らぬ他人が自分に殺意を抱いていると感じたり,自分の周囲に何かの陰謀があって監視されたり盗聴されたりしていると確信するものが「被害妄想」です。これは妄想の中でも頻度が高いものです。通りすがりの見知らぬ他人から,敵意を持ってにらまれたように感じるというようなこともあります。
 一見すると,このような幻覚や妄想などの症状は,日常からかけ離れた異質なものであるように思えます。一般の人はもちろん,医療関係者においても,患者が「幻覚」や「妄想」を訴えると,もう手に負えないと尻ごみすることが多いのです。
 しかしながら,幻覚や妄想は,正常な心理と不連続なものではありません。実は,「健常人」においても,幻覚や妄想に類似した体験はしばしば出現しています。
 その1つが「魔術的思考(マジカル・スィンキング)」と呼ばれるものです。この言葉が意味しているのは,迷信深いこと,千里眼やテレパシー,第六感などを信じることで,宗教的な奇跡を信じることなどが含まれます。

岩波 明 (2011). どこからが心の病ですか? 筑摩書房 pp.17

生命はあるが…

 宇宙に生命がいると思っているか,そしてエイリアンがわれわれの地球を訪ねてきているかどうか,私はいつも質問される。それについてはこう答えている。「宇宙に生命はいるとおもう。だが,エイリアンは地球を訪ねてきてはいない」。それを聞くと,ほとんどの人は面食らってしまう。どうしてUFOを信じていないのにエイリアンを信じているのか,と。
 実際,簡単なことだ。宇宙は広い。とんでもなく広い。われわれの銀河には何千億個もの星々が存在し,そのうち多くの——ほとんど,とまでは言わないにしても——星が惑星を持っていることが次第に明らかになりつつある。宇宙にはわれわれのような銀河が,さらに数十億個もある。私の考えでは,われわれの惑星が,生命を育むのにちょうどよい環境である唯一の惑星だ,と考えるのはおかしいと思う。

フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.302

なぜ天文家はUFOを見ない?

 このことについてちょっと考えてみよう。アマチュア天文家たちはいつも空を眺めているのだ。だが,UFOを見たといって私に会いにきたり電子メールを送ってくる人たちは,みなアマチュア天文家ではない。実際のところ,アマチュア天文家が,空で何か不可解な現象が起きているのを見たという話を,私は聞いたことがない。彼らのほうが,普通の人たちよりもはるかに多くの時間,空を見ている。統計的にみれば,彼らのほうがUFOをより多く発見しそうなものだが!どうしてこうなるんだろう?
 答えは簡単だ。アマチュア天文家は空を研究していることを思い出してほしい。彼らは空に何があり,どんな現象が起こりうるかを知っている。彼らが流星——あるいは金星でも,人工衛星の太陽電池パネルへの太陽光の反射でもいいのだが——を見たとして,それが異星人の宇宙船でないことを,彼らは知っているのである。アマチュア天文家は空についての道理を心得ている。実際,私が話したことがあるアマチュア天文家はみな,UFOがエイリアンの宇宙船であるということについてはきわめて深い疑いを抱いていた。このことは,多くのUFO目撃談を自然現象として説明する,非常に強力な論拠である。

フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.296-297

空想できるか

 テレビのドキュメンタリー番組では,ビッグ・バンを爆発のようにアニメーションで見せるのがふつうだ。暗黒の中を球形の火の玉が広がっていく。しあkしそれは間違いだ。爆発は空間の膨張そのものなのだから,膨張する外の宇宙は存在していない。宇宙はそこにあったのだ。外側にではない。ビッグ・バンの前には時間も存在しない。北極の北はどこだろう?
 拡大していく巨大の火の玉の中に住んでいるという幻想は残る。私自身それを振り払うのには苦労した。宇宙の中心の方向があって,そちらを見れば中心が見えると考えるかもしれない。問題なのは,爆発はわれわれの周り中にあることだ。われわれがその一部であり,見るところどころにもある。最大の映画館だ。
 まだ混乱しているって?宇宙論の研究者でも,四次元や空間の曲率を考えると頭が痛くなることもあるんじゃないかと思う。彼らは認めないだろうが。天文学者はこう言っている。宇宙論者はしばしば誤りを犯す。しかしつねに確信を持っている。
 それでもわれわれはこの広大な宇宙を理解しようとし続ける。アインシュタインがうまいことを言っている。「宇宙にかんして一番の驚くべきことは,われわれが宇宙を理解可能だということだ」。

フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.209-210

隕石は冷たい!

 これがまた流星にかんする別の誤解のもとになる。私がこれまでに見てきた映画やテレビ番組はすべて,小さな流星物質が地上に落ちて火災を発生させる。しかし現実にはそうはならない。流星物質はその生涯のほとんどを宇宙ですごし,それゆえにとても冷たいのだ。流星物質は大気を通過する短いあいだ加熱されるだけで,熱が内部に達するほど長時間加熱されはしない。とくに岩石からなっている場合だと,岩石はかなり断熱性が高いのだ。
 実際もっとも高温になる部分は融除されて飛んでいってしまうし,流星物質が地上に届くまでには数分かかるので,表面の部分はさらに冷却される。その上に地表から数キロメートルの高さの冷たい空気の中を通過する。だから衝突のときあるいはその直後には,流星物質の内部の超低温が外側の部分も冷やしてしまっているのだ。だから小さな流星物質は火災を発生しないどころか,その多くは実際に発見されるときには霜で覆われている。

フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.190-191

流星から隕石へ

 流星物質が地球の大気の上層に突入すると,前面の空気を圧縮する。気体が圧縮されると温度が上がり,流星物質が秒速100キロメートルといった高速度になると,通り道の空気に強い衝撃波が発生する。圧縮された空気はきわめて高温になり,流星物質が溶けるまでになる。流星物質の前面,すなわち高温の空気にさらされている側が溶けはじめる。流星物質からはさまざまな成分が放出され,それが熱せられるととても明るい光を放つ。流星物質の表面が溶けると,空を横切る明るい物体として地上から見えることになる。流星物質は光る流星になるのだ。
 これにかんしては私自身がイケナイ宇宙学に荷担してしまった。かつて私は流星物質を熱するのは空気との摩擦だと説明してしまったのだ。これは一般的な説明で,本にも書かれテレビでも言われているが,でも間違いなのだ。実際には流星物質と空気とのあいだにはほとんど摩擦は起きない。きわめて高温の圧縮された空気は,流星物質の前の離れたところに留まるのだ。それを物理学者は「離脱衝撃波」と呼んでいる。この高温の空気は,岩石の本当の表面からかなり離れたところに留まるので,その直後には比較的ゆっくり動く空気のポケットができて,それが岩石と接触する。これは「融除(アブレーション)」と呼ばれる。流星物質から融除されて後方に流れるかけらは輝く長い筋(流星痕)となる。流星痕は何キロメートルもの長さになり,空で数分間も輝き続けることもある。
 これらの過程,空気の激しい圧縮やら流星物質の表面の加熱やら溶けた外側の部分の融除やらは,すべてが数十キロメートルの高度で発生する。運動のエネルギーは急速に発散し,流星物質は急激に減速する。流星物質が音速以下にまで減速すると,空気はもう激しく圧縮されなくなり,流星の輝きは消える。ふつうの摩擦が大きく働くようになり,時速数百キロメートルまで流星物質を減速する。これは自動車よりもそう速くはない速度だ。
 そのため平均的な流星物質が大気の残りの部分を通り抜けて,地上に到達するまでには数分間かかる。流星物質が地上に落下した場合には隕石と呼ばれる。

フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.189-190

大いなる偶然

 しかしながらわれわれの青い惑星にはたったひとつ特別なことがある。場所の偶然の一致であると同時に時間の偶然の一致であり,太陽系のすべての月と惑星のなかでも地球だけに言えることだ。太陽は月よりもずっと大きい。約400倍は大きいのだが,同時にわれわれから約400倍遠くに離れている。このふたつの数字が偶然にも打ち消し合った結果として,地球上からは,月と太陽は空の上で同じ大きさに見えるのだ。

フィリップ・プレイト 工藤巌・熊谷玲美・斎藤隆央・寺薗淳也(訳) (2009). イケナイ宇宙学:間違いだらけの天文常識 楽工社 pp.163

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