そして,そのときが来た。中国は以前よりも豊かになり,コンピュータは安くなった。今の流行は,機能を絞り込んで価格を250ドル程度にしたラップトップのネットブックだ。マイクロソフトはネットブック用のOSを,通常版の4分の1以下の約20ドルで提供している。不正コピーによってユーザーはマイクロソフトの製品を使っているので,新しい製品を選ぶときも必然的にマイクロソフトを選ぶようになった。数十年に及ぶ不正コピーの時代を経て,今日の中国では海賊版市場と並んで有料の市場も巨大になっている。マイクロソフトが優位を保つなか,消費者はより金持ちになり,無認可ソフトを手に入れるための面倒をがまんできなくなってきたのだ。ゲイツの戦略は,不正コピーを根絶しようときびしい措置をとるのではなく,ある程度低い水準に保つための対策をするだけだったが,それが功を奏したのだ。
クリス・アンダーソン 高橋則明(訳) (2009). フリー:<無料>からお金を生み出す新戦略 日本放送出版協会 p.137
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