おそらく間違いは,人間の心に特有の能力や傾向が,手順の規定された儀式があらゆる人間集団に存在することを説明すると仮定したことである。これまで何度も述べたように,多くの文化的創造物——視覚芸術から音楽,皮なめし職人の低い地位,遺体への強い関心にいたるまで——がうまくいっているのは,それらがさまざまな心的能力を作動させたからである。そうした心的能力のほとんどは,本来それとは異なるきわめて明確な機能をもっている。言い換えると,多くの文化は,注意を引きつける大きな力と人間の心にとって大きな重要性をもつ適切な認知的小道具からなるが,それは人間の心の現在の編成のしかたの副産物である。
パスカル・ボイヤー 鈴木光太郎・中村潔(訳) (2008). 神はなぜいるのか? NTT出版 p.307
(Boyer, P. (2002). Religion Explained: The Human Instincts that Fashion Gods, Spirits and Ancestors. London: Vintage.)
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