どうしてぼくは,そこまで悪くなってしまったのだろう。
振り返ると,一つの理由に突きあたる。調子を崩した原因は,勝手に薬の量を調節してしまったことだ。ぼくは,本当にいけないことをしていた。
「調子いいからこれ二錠でいいや」
「眠れないからこれ三錠に,これ一錠プラスして……」
主治医が処方してくれた薬の分量を守らず,自己判断で,気分に応じて飲む。少なすぎることもあれば,死にたいのかというくらい多すぎることもある。
ぼくのしていたことは,きつい言葉を使うと,「薬物濫用」だ。
薬をシートから出して,テーブルの上に大量に集める。それを手にとって,「これでいいんだ」と口の中に投げ込む。過剰に摂取して,安心を得ようとする。嘘の安心を手に入れてしまうと,摂取する分量を増やすことで,さらに大きな安心を求めてしまう。バランスが崩れ,反動は仕返しのように必ず襲いかかってくる。感情のコントロールは,完全に利かなくなってしまう。
個人で分量を変えることは,絶対にしてはいけない。
ハウス加賀谷・松本キック (2013). 統合失調症がやってきた イースト・プレス pp.119
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