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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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欺くのは難しい

これはどういうことか?結論を言えば,「欺く」という反社会的な行為は,前頭葉の処理能力をフルに活かさねばならない複雑な実行機能を必要とする。実際,真実を語るのは非常に簡単で,ホラを吹くのはそれよりはるかにむずかしい。実行機能に強く依存し,それだけ脳の活動を要する。また,欺瞞は「心の理論」を必要とする。たとえば,1月27日水曜日の午後8時にどこにいたのかについて嘘をつくとき,私は,あなたが私について何を知っているのか,あるいは知らないのかを把握していなければならない。「その日はほんとうに,家族に自分の誕生日を祝ってもらってたんだっけ?」などと思案をめぐらせる。あなたが何をもっともらしいと,あるいはありそうもないと考えるかを把握している必要がある。この「読心」には,前頭前皮質と,側頭葉や頭頂葉の下位領域を結びつける,いくつかの脳領域を動員しなければならない。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.140-141
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前頭前皮質の障害

なぜ前頭前皮質の機能不全が暴力に結びつくのだろうか?何が機能不全に陥った脳と犯罪行為を結びつけるのか?前頭前皮質の障害は何を引き起こすのか?これらの問いには,以下のようにさまざまなレベルで答えられる。

1.情動レベル 前頭前皮質の機能の低下は,たとえば怒りなどの生の情動を生む大脳辺縁系のような,進化的により古い脳の領域に対するコントロールの喪失をもたらす。大脳辺縁系の生む情動は,洗練された前頭前皮質によって蓋をされているとも言え,蓋を取れば,情動はあふれ出す。
2.行動レベル 前頭前皮質にダメージを負った患者を対象に行なわれた神経学的な研究によって,そのようなダメージはリスクの大きい行為,無責任な態度,規則の侵犯を導くことが知られている。そこから暴力行為へ至る道のりは,それほど遠くない。
3.人格レベル 前頭前皮質のダメージによって,衝動性の増大,自制能力の喪失,行動の調整/抑制能力の喪失など,さまざまな人格の変化が引きおこされる。暴力犯罪者がこれらの性格を持つことは,容易に想像できる。
4.社会レベル 前頭前皮質のダメージは,未熟,要領の悪さ,的はずれな社会的判断をもたらす。このような社会的スキルの欠如が,不適切な行動や,暴力を用いずに面倒な状況を解決する能力の欠如をもたらすことは明らかだ。
5.認知レベル 前頭前皮質の機能不全は,知性面での柔軟性の喪失と,問題解決能力の劣化に結びつく。このような知的障害は,のちに学業不振,失業,貧困などにつながり,ひいてはその人を,暴力に訴えたり,犯罪に走ったりしやすくする。
 
エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.108-109

攻撃性のタイプ

ここで攻撃性のタイプの違いを考えてみよう。MAOA戦士遺伝子は,コントロールされた冷酷な暴力より,感情的で衝動的な,血気にはやる暴力を振るいやすい性格の形成に,とりわけ大きな役割を果たすのかもしれない。ハン・ブルナーは,オランダの親族の研究では,怒り,恐れ,フラストレーションに反応して生じる衝動的な形態の攻撃性が,より頻繁に見られたと報告している。ロサンゼルスで行なわれた研究も,この解釈に合致する。この研究では,低MAOA遺伝子を持つカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の学生は,より攻撃的な性格のみならず,人間関係に過敏に反応する性格を持つことがわかった。つまり彼らは,感情的に傷つきやすい。また,社会的に排除されることに対して,脳がより強く反応した。これは,個人的な中傷によって彼らがいとも簡単に動揺することを意味する。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.90

両親の影響

実のところ,両親は,一般に考えられているほどには大きな役割を果たしていない。ローラと私の調査では,反社会的行動に対する家庭の影響は,平均して全分散の22パーセントを説明するにすぎない。それに対し家庭外の環境の影響は分散の33パーセントを説明する。9歳児でさえ,両親より遊び仲間に大きな影響を受ける。
 これは信じがたく思われるかもしれないが,われわれの発見は偶然ではない。反社会的行動をテーマとするあらゆる遺伝研究(100以上ある)を総括したレビューを見ても,結果は同じである。同じことは,反社会的行動以外のさまざまな行動や性格にも当てはまる。実際,行動遺伝学の第一人者,ミネソタ大学のトム・ブシャールは,「成人後の性格への,環境を共有することによる影響はほぼゼロ」だと主張している。そう,何の影響もないということだ。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.73-74

攻撃性の遺伝

双子の研究は,攻撃性と暴力も遺伝することを示す。われわれは,攻撃性を反応的(reactive)なものと,先攻的な(proactive)ものに分類した。反応的な攻撃とは,誰かに殴られて殴り返したケースがそれにあたり,防御あるいは報復を目的とした攻撃を指す。この形態の攻撃性の遺伝率は38パーセントであった。それに対し先攻的な攻撃は,より卑劣で残酷なものを指し,たとえば誰かから何かを奪い取るときに行使される。この形態の攻撃性の遺伝率はいくぶん高く,50パーセントだった。この研究でも,環境の共有による影響は,どちらの形態の攻撃性に関してもごくわずかであり,実際のところ男子に関しては存在しなかった。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.70

パーセンテージ

ところで,二卵性双生児は平均して50パーセントの遺伝子を共有すると述べたが,補足が必要であろう。私とあなたは99パーセントの,また人間とチンパンジーは,98パーセントの遺伝子を共有する。ちなみにチンパンジーは,遺伝的にゴリラより人間に近い。サルで思い出したが,バナナの木は,人間と60パーセントの遺伝子を共有する。したがって,「二卵性双生児は50パーセントの遺伝子を共有する」と言うとき,それは人によって異なり得るわずかな遺伝子のうちの50パーセントを意味する。同様に,一卵性双生児は互いに100パーセント完全に同じ遺伝子を共有するわけではなく,人によって異なり得る遺伝子1パーセントのうちの99パーセントを共有する。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.68

反社会性の有利さ

環境条件は国ごとに大きく異なる。また人類の行動は,先史時代を通じて,変化する環境に適応すべく進化した。この見方に基づいて,社会の全構成員が反社会的な特徴を発現する場合もあると考える人類学の研究もある。これらの研究はおもに,種々の繁殖戦略と社会行動を生む生態的,環境的要因に照らしつつ,各文化間の反社会的行動の相違を比較するという調査方法をとる。特定の生態的な条件と,特定の行動様式が関連するのなら,私たちが反社会的と呼ぶ行動様式も,特定の環境条件を持つ文化のもとでとりわけ有利に働き得ると考えられる。反社会的で精神病質的な生活様式は,まさにそのような文化のもとで発展したのかもしれない。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.38

子どもを残す

すべては,個体がいかに環境に「適応」できるかにかかっている。その際,マラソンや重量挙げの能力より,何人の子どもを残せるかが重要なのだ。自分と同じ遺伝子を持つ子どもが多ければ多いほど,より多数の自己の遺伝子が次世代の遺伝子プールに残される。遺伝子の観点からは,まさにそれのみが成功と見なされる。「成功」の意味に関して,「学校では良い成績を収める」「やりがいのある仕事に就く」「本を書く」などといった,より高尚な定義が頭のなかに去来するようなら,次のことを考えてみてほしい。あなたの遺伝子マシンは,まさしくそのような高尚な見方を生産することで,巧妙にあなたを動機づけ,繁殖成功度を高める地位や資源を獲得させようとしているのだということを。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.35

攻撃性

今日の私たちは,攻撃性を不適応で常軌を逸したものと考えている。暴力犯罪者には,彼らや他の人々が犯罪を繰り返すのを阻止するために重い懲罰が課せられる。したがって犯罪が適応的であるとは,とても言えない。だが,進化心理学者の主張は異なる。攻撃性は,他人から資源をもぎ取るために用いられ,資源は進化というゲームの核をなし,生きるため,子孫を残すため,子どもを養育するために必要なものだ。キャンディを巻き上げるために他の子どもを脅すいじめっ子のいびりから銀行強盗に至るまで,悪行には進化的な起源が存在する。また,防御のために行使される攻撃性は,自分の資源を奪おうとする他人の意図をくじくために重要だ。酒場でのけんかは力と支配の序列の確立に役立ち,目をつけている女性やライバルたちの面前で己の強さを誇示できる。男性にとっての求愛のゲームとは,社会のなかで高い地位を手に入れることでもある。「あいつは攻撃的でけんかっ早い」という評判をとることは,社会的なグループのなかで自己の地位を向上させ,より多くの資源の獲得を可能にするばかりか,他人の攻撃を阻止するのにも役立つ。そしてこれは,遊園地で遊ぶ子どもにも,囚人にも同様に当てはまる。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.33

ロンブローゾの理論

ロンブローゾの理論には2つのポイントがある。犯罪の基盤には脳が関係するという点と,犯罪者は進化的な観点から見て,より原始的な種への退行だとする点だ。ロンブローゾの見るところでは,犯罪者は「先祖返り的な刻印」,すなわち大きなあご,傾斜した額,一本の手掌線など,人類進化の初期段階に由来する身体的特徴をもとに特定できた。これらの特徴をもとに,彼はユダヤ人や北部イタリア人を頂点に,また,(ビレラが属する)南部イタリア人,ボリビア人,ペルー人を底辺に置く進化的な序列を措定した。おそらくその見方には,農業中心の貧しい南部イタリアでは犯罪発生率が北部よりはるかに高かったという当時の事情も関係しているのだろう。それは,統一されたばかりのイタリアを悩ます「南部問題」の数ある徴候のうちの1つだった。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.29

価値観の二極化

さらにいえば,価値観の二極化は妊娠中絶に限ったことではない。「リベラル」と「保守」の意識のズレが広がり,互いの敵対感情が大きくなっているとの報告もある。
 ビュー・リサーチ・センターが2014年に全米で実施した共和党支持者と民主党支持者の意識の違いを探る調査では,「自分は一貫してリベラル」「自分は一貫して保守」と考える人は,20年前の1994年の調査と比べて10%から21%に増えた。民主党を「とても好ましくない」と考える共和党支持者は20年間で17%から43%に増え,逆に共和党を「とても好ましくない」と考える民主党支持者は16%から38%に増えた。ひとえに集団が固定化し,互いを許容する余裕がなくなっているのである。

行方史郎 (2015). IQは金で買えるのか:世界遺伝子研究最前線 朝日新聞出版 pp.144

生まれながらの才能

「才能」や「素質」と呼ばれてきたものの正体が,遺伝学や分子生物学の進歩で具体的に見えてきたことは間違いない。それらは親から受け継がれたものであり,後からお金や努力では決して獲得できない。わたしが子どものころ,スポーツを題材にしたマンガの世界では「背が低い」といったスポーツ選手としては不利な生まれつきの性質を抱えた主人公が,人並み外れた意志と努力で一流選手になるという一種の成功モデルがあったように」思う。最近のスポーツマンガは,もともと才能をもった主人公が何かのきっかけで自らの潜在性に目覚め,適切な指導のもとに成長していく,よりリアリティーのあるストーリーが多い印象を受ける。

行方史郎 (2015). IQは金で買えるのか:世界遺伝子研究最前線 朝日新聞出版 pp.111

マウスと人間

同じたんぱく質を作る遺伝子でもヒトとマウスでは働き方や働く場面が違う場合はいくらでもある。先に統合失調症の症状を示す遺伝子改変マウスの例を紹介したが,逆にヒトで特定の病気の原因となっている遺伝子の働きをマウスで止めても,人間と同じような症状を起こすとは限らない。結局のところ,病気になったとき,ヒトとマウスで働き方の違う遺伝子を薬の標的にしてしまうと,マウスで効果があるのに人では効かない,ということが起こり得る。でも,両者で働き方が共通している遺伝子を見出すことさえできれば,マウスはヒトのモデルとして十分ふさわしい,というのが2人の見立てである。

行方史郎 (2015). IQは金で買えるのか:世界遺伝子研究最前線 朝日新聞出版 pp.108

クローンでも

しかしながら,ペットクローンが広まらなかったのは,遺伝的に同一であっても,生まれてくるのは,別の個性を持った個体であるという単純な事実に改めて気付いたからではないだろうか。遺伝的に同一とはいえ,亡くなったペットが持っていた記憶や体験までが,受け継がれるわけではない。クローンネコCCのように毛の色が異なることもある。

行方史郎 (2015). IQは金で買えるのか:世界遺伝子研究最前線 朝日新聞出版 pp.90-91

「遺伝子が決める」

しかし,一方で遺伝子が働く仕組みは想像以上に複雑で,環境や条件に大きく左右されることがわかってきた。これがもう1つの流れである。とくにここ数年間は,DNAの塩基配列に変化がなくても遺伝子の働きが活性化あるいは不活性化される「エピジェネティクス」という仕組みが脚光を浴びている。これらは総じて「遺伝子が決める」といった極端な遺伝子決定論に対するアンチテーゼとして語られることもある。大事なのは,遺伝子が「ある」か「ない」かではなく,どのような条件のもとで働くかだ——そうした視点で考えてみると,一人ひとりが生まれつき持っている遺伝素因より,生まれた後でいかに制御するかが重要ということになる。

行方史郎 (2015). IQは金で買えるのか:世界遺伝子研究最前線 朝日新聞出版 pp.9

遺伝子と薬

ただ,遺伝子や遺伝情報をめぐる取材をしていると,互いにやや方向の異なったベクトルがあると感じる。
 1つは,遺伝情報や技術をうまく使えば,病気の予防や治療を根本的に変えられるのではないかという期待だ。遺伝学の進歩と分子生物学的なアプローチとで,病気が起きるメカニズムの解明は確実に進みつつある。病気の発症にかかわる遺伝子は,今や特定の変異で起きる先天性の疾患に限らず,がんや糖尿病,心臓病,アルツハイマー病といった,人生の終盤で起きるような病気でも次々見つかっている。薬の効きにも個人の遺伝的な要因が深くかかわっていることがわかってきた。こうした遺伝情報を利用すれば,一人ひとりの体質にあわせた病気の治療が可能になると言われている。

行方史郎 (2015). IQは金で買えるのか:世界遺伝子研究最前線 朝日新聞出版 pp.8-9

脳の成熟年齢

脳科学によって行動を説明することには限界があるが,それをますます複雑にしているのは,脳の成熟年齢を科学者が引き上げていることだ。言い換えれば,人は何歳で神経学的に成熟するかということについて,今のところ明確なラインも境界も区分もないのだ。しかし,ますますはっきりしてきたのは,脳の成長は20歳以降もまだ続いていることだ。わたしは科学者として,医師として,あらゆる疑問には答えがあり,人生のあらゆる出来事と段階には明確な境界があると考えたいが,同時にそんなものはないということを知っている。また,嵐の10代が過ぎれば順風満帆と考えたいが,それも実際は違う。しかし,こうしている間にも,地方自治体は,危険な状態にある未成年者のための更生プログラムやカウンセリング・プログラムを発案するより,さらなる刑務所や収容施設の建設に税金をつぎ込んでいるのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 292
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

共通テスト

しかし,わたしの両親の生まれ故郷であるイギリスでは,こううまくはいかなかっただろう。イギリスでは,小学6年生の時に,共通テストを受けることになっている。その成績が悪い子は,Aレベルに進むことができず,それは大学に進学しないことを意味する。イギリスでは,教育は権利ではなく,むしろ特権なのだ。誰もが大学へ行くわけではないので,教育は階級制度の一部となっている。イギリスや他の多くの国々で,子どもたちが思春期も迎えないうちにテストされ,高等教育を受けるに値する知的能力を持っているかどうかを評価されるというのは,実に残念なことだ。もしわたしの息子たちが11歳や12歳,あるいは15歳や16歳で,このような人生を決める「選別」を受けたとしたら,今そうなっているように,良い大学を出て社会で成功できていたかどうかはわからない。ティーンには不確定要素が多い。そんな彼らの将来が,未成熟の脳の評価で決められるのは,理不尽と言えるだろう。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 258-259
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

行動中毒

行動中毒は,薬物中毒と同じく油断できない。なぜなら,同じ脳回路が関わっているからだ。ティーンは,脳の報酬中枢を刺激することでもたらされる急激な気分の良さに敏感で,その仕組みは,ギャンブルも,ソーシャルメディアでの交流も,コカインの吸引も同じなのだ。メンタルと行動のヘルスケアを提供するアメリカ最大のグループ,CRCヘルスグループは,インターネット中毒は確かに存在するとし,ウェブサイトと文献のどちらにも,その指標となる行動と生理学的特徴を挙げている。

 学校にいない時間のほとんどをネットやコンピュータゲームに費やす
 学校で居眠りをする
 宿題を忘れる
 成績が下がる
 パソコンやコンピュータゲームを優先する
 社会集団(クラブやスポーツ)から抜ける
 コンピュータゲームをしていないときやパソコンに向かっていないときにいらいらする
 キーボードの使い過ぎによる手根管症候群(手や指のしびれや痛み)
 不眠
 ネットやコンピュータゲームを続けるために食事を抜く
 身なりや清潔さに気を配らなくなる
 頭痛,背痛,頸痛
 ドライアイや視力の問題

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 238-239
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

青年期と精神疾患

青年期は特殊な時期で,いくつかの精神疾患は,この時期から発症しはじめる。ちょっとした驚きだが,精神疾患になるには,ある程度,脳が成熟する必要があるのだ。実際,多くの気分や情動の障害には,前頭葉,特に前頭前野の異常が関わっていることがわかっている。そして,ティーンは前頭葉が他の領域と十分につながっていないので,前頭葉の異常がもたらす統合失調症になるはずがないのだ。統合失調症が,幼少期には見られず,10代後半から20代前半に始まるのは,前頭葉の未成熟さが一因になっているのだろう。
 もう1つ興味深いのは,青年期では,喘息や糖尿病より,精神疾患になる人のほうが多いということだ。ティーンの5人に1人は,日常生活に影響するほどの,精神や行動の不調を抱えている。さらに驚くべきことに,精神疾患の約半分は,青年期に発症する。12歳から16歳までの青少年のうち,自殺を考えたことがあるのは,女子の20パーセント,男子の10パーセントにのぼる。ティーンと若年成人の死因は,トップが自動車事故で,それに続くのが自殺なのだ。青年期においては,薬物やアルコールの乱用,危険な行動,学業成績の急低下,さらには頻繁な健康問題といったことさえ,抑鬱や他の精神的ストレスの兆候かもしれないし,ひょっとすると,深刻な精神疾患の危険信号という可能性もある。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 206-208
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

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