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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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大混乱

つまり,ティーンの脳では,もともとストレス反応システムが過剰に活性化しているので,さらにストレスがかかると,大混乱が起きるのだ。PTSDを患うと,その後の人生を通じて,恐怖と不安に苦しむことになりかねない。青年期のPTSDは,恐怖と不安だけでなく,悲しみ,怒り,孤独感,自尊心のなさ,他者への不信などももたらす。また,行動面でも,社会的孤立,成績不振,攻撃性,性欲過剰,自傷,薬物やアルコール依存など,その影響は幅広い。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 197
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)
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トラウマのリスク

ストレスは,トラウマとも深い関わりを持つ。青年期は,他のどの年代よりトラウマを負うリスクが高く,トラウマは彼らの脳の成長に,壊滅的な影響を及ぼす。2010年,ノースカロライナ州で行われた大規模な研究によると,16歳までの若者の4分の1が,深刻な事故,病気,親の死,性的暴行,家庭内暴力,自然災害,戦争,テロ,といった「震度の高い」経験をしていた。「震度の低い」経験には,両親の別居,離婚,親友や恋人との別れなどが含まれ,調査対象になったティーンの3分の1が,過去3ヶ月間に少なくとも一度,それを経験していた。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 196
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

大麻の影響

大麻の乱用と脳のダメージに関して,最も重要な要素は年齢である。ローティーンの使用者はおとなの2倍,中毒になりやすい。16歳になる前に大麻にふけった人は,集中力と注意力に問題があり,計画性,柔軟さ,抽象思考を測るテストで,そうでない人の2倍ミスを犯す。また,若い大麻喫煙者ほど,吸う量が多い。結論。早く始めるほど,乱用は激しくなるのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 168
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

次善の選択

科学者は,リスクに惹かれる傾向を「次善の選択」という言葉で説明しようとする。つまり,50パーセントの確率で得られる報酬(最善の選択)より,20パーセントの確率で得られる報酬(次善の選択)のほうが満足度が高いので,人はギャンブル性の高い報酬に惹かれやすいというのだ。そして,10代が「次善の選択」をしがちなのは,彼らの衝動性,不合理性,若さゆえの自己中心性,あるいは自分は傷つかないという根拠のない自信のせいだと,大半のおとなは考えている。アリストテレスでさえ,2000年以上昔の古代ギリシャの「いかれた」若者が,おとなとは違う考え方をし,行動をするのは「感情が高ぶりやすく,短気で,衝動に流されやすい」からだと書いている。彼はまた,若者は自らの情熱の奴隷となっており,それは「わずかにあった自制心も野望に押しつぶされ,傲慢であるがゆえに,怪我をするのではないかと想像することさえできないのだ」と記している。つまり,若者はあまりに自己陶酔的で,無分別で,自信満々なので,おとななら決してしないことをしても,自分は怪我をしないと考えがちだ,と言っているのだ。しかし,「自己陶酔」「無分別」「自信満々」というのは,あえて危険な行動に走るおとなのためのレッテルであり,それをそのままティーンに用いることはできない。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 120-121
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

睡眠不足の影響

2011年,アメリカ疾病対策予防センターは大規模な研究を行い,ティーンの睡眠不足と,喫煙,飲酒,大麻吸引など不健康な習慣の増加に,相関が見られることを発見した。イタリアの研究者も同様の結果を報告している。睡眠不足は,ティーンの生活のあらゆる側面に悪影響を及ぼすようだ。

 生理学的には,以下のような悪影響が出る。
*ストレスで肌が荒れ,にきびや乾癬などができる
*過食したり,不健康なものを食べたりしがちになる
*スポーツで怪我をする
*高血圧になる
*深刻な病気にかかりやすい

 感情面には,以下のような悪影響が出る。
*攻撃的になる
*いらいらする
*衝動的で状況をわきまえない
*自尊心が低い
*気分のムラが大きい

 認知面には,以下のような悪影響が出る。
*学習能力が低下する
*創造力が働かない
*問題解決に時間がかかる
*物忘れがひどくなる

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 112-113
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

睡眠タイプ

睡眠は日々の生活に欠かせない要素だが,詳しいメカニズムはほとんど解明されていない。わかっているのは,だれにとっても欠かせないということくらいだ。睡眠のパターンは一生のうちに変化するが,これはすべての生物に共通して言えることだ。乳幼児は「ひばり型」で,早寝早起き。若者は「ふくろう型」で遅く寝て遅く起きる。このような睡眠パターンをクロノタイプと呼び,「ひばり型」を「朝型」,「ふくろう型」を「夜型」と言う。睡眠パターンは脳のシグナルとホルモンの複雑な関係によってコントロールされており,シグナルとホルモンはどちらも成長に応じて調整されていく。大半の種では,青年期に夜更かししていても,おとなになると「早寝早起き」になる。
 つまり,ティーンは学校へ行くために,おとなのクロノタイプに合わせて,無理矢理,早起きしているのだ。しかし,早く起きたからと言って,早く寝るわけではない。夜になっても彼らの脳は調整されず,本来の夜型のクロノタイプに固執しがちだ。その結果,睡眠時間は短くなる。そして休日には,体内時計に命じられるまま,朝寝坊に戻る。好きなだけ寝ていていいと言われたら,彼らは一晩に9時間から10時間眠るだろう。しかし,学校へ行くために起きなければならず,常に1日2.75時間分の睡眠が足りないままだ。これが慢性睡眠不足症候群の原因と見なされている。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 103-104
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

10代の学習能力

これらの研究から新たにわかった最も重要なことは,10代の脳は学習能力が非常に高いということだ。これを当たり前と思ってはいけない。10代の脳では,長期定着過程(LTP)がきわめて起こりやすい。動物の場合でも,成体より物事を覚えるのが速い。これはシナプスの可塑性が高いせいなのだろうか。それを知るために,研究者は,若いラットとおとなのラットの脳の切片でLTPの違いを見た。すると,若いラットの脳の方が,LTPが「はるかに多く起きている」ことがわかった。バースト刺激(一定のリズムの刺激。「練習」に相当する)の「前」と「後」を比べると,若いラットのシナプスの増加は,成体のそれを1.5倍上回り,しかも,増えたシナプスはより長く保たれたのだ。
 つまり,10代で学んだことは,おとなになってから学ぶことより,記憶しやすく,しかもその記憶が長く持続する,ということだ。この事実を見過ごしてはならない!10代とは,得意なことを見出し,伸びる才能に投資する時期なのだ。同時に,学習や感情面の問題に対して,治療や支援の効果がきわめて高い時期でもある。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 89-91
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

シナプス変化

後にシナプスの研究でノーベル賞を受賞するジョン・エックルスは,シナプスが変化するのにどれほどの刺激が必要なのかがわからず,悩んでいた。「学習という現象を説明するのは難しい。なぜなら,検出できるほどシナプスを変化させるには,長期にわたってシナプスを過剰に使うか,あるいは使わずにいる必要があるからだ」と彼は書いている。彼が気づかなかったのは,自分がいらいらしながら観察していた反復反応こそが,脳が働き,まさに学習している証拠だったということだ。繰りかえし刺激を受けると,ニューロンはより強く反応するようになる。こうして,脳の回路は「学習」する。そして,深く刻まれた知識ほど,思い出すのも使うのも容易になる。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 87
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

目新しさ

脳は,とにかく新しい情報を得ることに格別に熱心になるようプログラムされている。この,新しい情報を得ることこそが,学習の核心だ。あるニューロンどうしの間で情報が伝わり,相手を「オン」にする興奮性の信号のやりとりが増えてくると,ニューロンをつないでいるシナプスの結びつきが強くなる。脳が成長してつながりができてゆくのは,この活動の結果なのだ。実際,成長中の若い脳には,「オフ」情報を伝える抑制性シナプスよりも,興奮性シナプスの方が多い。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 84
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

洞察力の発達

専門家によると,洞察力は,自分を客観的に見る能力によるところが大きいそうだ。そしてこの能力は,前頭葉と頭頂葉から生じるので,成熟するまでに時間がかかる。青春時代は,脳で大きな変化が起きているおかげで,活力に満ちている。だがその一方で,成長途上にある10代の脳は,恐ろしい存在にもなり得る。何が起きてもおかしくはないし,その大半は悪いことだ。ティーンは,外見がほぼおとなで,多くの面でおとなのような考え方をし,学習能力は驚異的だ。しかし,ティーンにはできないことがあること,つまり彼らの認知,情動,行動には限界があることを知っておくのは非常に重要である。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 74
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

Go No-Go Task

抑制性を調べるためによく使われるのは,ゴー・ノーゴー・テストだ。被験者は,ある文字や絵が出てきたらできるだけ速くボタンを押し(ゴー反応),Xの文字が出てきたらボタンを押さない(ノーゴー反応)よう,指示される。いくつかの研究において,このテストで子どもと若者を比べたところ,正確さにそれほど差はなかったが,反応を抑制するスピードは,8歳から20歳までの間に大幅に遅くなった。つまり子どもより若者のほうが,何かをしないという判断をくだすのに,時間がかかるのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 65
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

神経伝達物質

よく知られる興奮性の神経伝達物質は,エピネフリン,ノルエピネフリン,グルタミン酸である。一方,抑制性の神経伝達物質は,ガンマアミノ酪酸(GABA)やセロトニンなどで,身体の興奮を鎮め,落ち着かせる。セロトニンが足りないと攻撃的になったり鬱病になったりする。ドーパミンは特殊な神経伝達物質で,興奮性にも抑制性にもなる。また,エピネフリンなどと同じく,ホルモンでもある。副腎ではホルモンとしてはたらき,脳では神経伝達物質としてはたらくのだ。ドーパミンは脳の「報酬回路」に不可欠で,人を興奮させたり,集中させたりする。「どうしてもこれが欲しい」という欲求を駆り立てるので,目標に向かう原動力となるが,場合によっては中毒を招く。脳内に放出されるドーパミンが増えると,報酬回路が活性化し,欲求がますます高まる。レストラン,カジノ,会議室,寝室,どこにいようと,この摂理は同じだ。高カロリーの食品は,大量のドーパミンを放出させる。なぜなら,カロリーが高いと生存の可能性を高めるので,報酬回路がそれを食べることを後押しするのだ。アイスクリームが食べたくてたまらない時や,ギャンブルやセックスをしたくてたまらない時,わたしたちが欲しているのは,甘味や金銭やオーガズムではない。ドーパミンを欲しているのだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 64-65
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

ニューロンの多さ

では,それほどニューロンが多いのに,なぜ赤ん坊はモーツァルトやアインシュタインのような天才ではないのだろう。それは,ふんだんにニューロンを持っていても,その一部しかつながっていないからだ。したがって,脳に入ってきた情報は,ニューロンに取り込まれるものの,次にどこへ行けばいいかがわからない。不慣れな騒々しい都会の真ん中に放り出された人のように,赤ん坊の脳は,さまざまな可能性に囲まれていながら,その新しい世界を案内してくれる地図もコンパスも持ち合わせていないのだ。「生まれたばかりの赤ん坊は,麻薬によるトリップに似た,サイケデリックな幻覚を見ている」と,カナダ・モントリオールのマギル大学の神経科学者,ダニエル・レヴィンティンはその状態をわかりやすく説明する。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 59
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

思春期の脳

では,小児期から青年期を通じて,脳の領域はどのような順でつながっていくのだろう。脳画像診断が開発されたおかげで,それを調べられるようになった。核磁気共鳴画像法(MRI)では,脳の正確な画像だけではなく,領域間のつながりを見ることができる。さらに,新型の機能的MRI,略して「fMRI」では,脳の各領域が活性化する様子を見ることができる。複数の領域が同時に活性化した場合,それらの領域はつながっているのだ。この10年間にアメリカ国立精神衛生研究所の主導で,21歳までに脳の領域がどのようにつながっていくかを調べる大規模な研究が行われた。
 結果は驚くべきものだった。
 脳の領域は,後方から前方へとゆっくりつながっていった。そして,最後にようやく,前頭葉と「つながった」。実のところ,ティーンの脳の完成度は80パーセントで,つながりの弱い領域が20パーセントも残されていたのだ。つまり,ティーンの脳では,前頭葉と他の領域をつなぐ配線がまだ完成していないのである。なぜティーンは感情の起伏が激しく,いらいらしがちで,衝動的で,かっとしやすいのか。なぜ集中力や根気に欠け,おとなと関わるのが苦手なのか。なぜドラッグやアルコールの誘惑に弱く,危険な行動に走りやすいのか。すべては前頭葉の未成熟さとつながりの弱さが原因だったのだ。そして,あなたやわたしが,自分のことを洗練された知的なおとなだと思うのであれば,それは前頭葉とのつながりが完成しているからなのだ。
 ティーンの前頭葉ではすべての「シリンダー」が十分に発火しているわけではないので,彼らがひんぱんに悲劇的な間違いをおかしたり,災難に遭遇したりするのは,当然と言えば当然である。前頭葉とそのつながりを作る作業は,20歳になってもまだ終了しない。したがって,大学時代も,脳はまだ脆弱性を残している。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 45-47
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

性ホルモンと思春期

今日では,テストステロン,エストロゲン,プロゲステロンといった性ホルモンが,少年の声変わりやひげの成長,少女の乳房の発達や月経の始まりなど,思春期の身体の変化を引き起こすことがわかっている。これらの性ホルモンは,男女とも小児期から体内にあるのだが,思春期が始まると,急に濃度が高くなる。少女のエストロゲンとプロゲステロンの分泌量は,月経周期に合わせて変動する。どちらも気分をコントロールする脳内物質と関連しているため,朗らかに笑っていた14歳の少女が,寝室のドアを閉めたとたんに落ち込むというようなことも起きる。一方,少年が思春期を迎えると,それまでの30倍も多いテストステロンが体内に流れ始める。そのホルモンを受け取る受容体が集中している脳組織の扁桃体は,進化的に組み込まれた「闘争・逃走反応(戦うか逃げるか反応)」をコントロールする部位だ。
 性ホルモンは,感情をコントロールする大脳辺縁系で特に活発にはたらく。ティーンの感情が不安定なのはそのせいだ。また,少女が「泣ける」小説を好み,少年がジェットコースターに夢中になるように,ティーンが感情に訴える刺激を欲しがちなのも,性ホルモンに原因がある。彼らの脳はまだ理性的な判断ができないが,ホルモンでハイになっているので刺激を渇望するのだ。この二重の呪縛が,時としてティーンや家族に大惨事をもたらす。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 28-29
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

コントロールできない

実を言えば,それはティーンも同じで,彼らも自分をコントロールできないのだ。ホルモンについて語るとき,忘れてはならないのは,ティーンの脳はこれらのホルモンを初めて経験しているということだ。したがって,身体の反応をどうコントロールすればいいか,わからないのである。それは初めてタバコを吸ったときの感覚に少し似ている。深く吸い込むと,顔は火照り,頭はふらふらし,胃は少々むかついたことだろう。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 28
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

甘やかすな

両親や教育者に対して,ホールはこう提言した。「青年を甘やかしてはならない。彼らをしっかり監督し,公共への奉仕の精神,鍛錬,利他主義,愛国心,権威を尊重する姿勢を叩き込むべきである」。青年期の反抗やストレスの扱いについて,ホールの見方はやや偏っていたようだ。それでも,青年期と思春期に生物学的なつながりがあることを示唆し,また,後世の神経科学者が発見する脳の順応性,すなわち「可塑性(plasticity)」という言葉を先んじて使ったホールは,この分野のパイオニアと見なされている。彼は「性格や個性は形成されるが,すべては可塑的(プラスチック)である」と書いているが,それは合成樹脂のプラスチックのことではなく「柔軟で可変的」という意味だ。また彼は,「青年期は自意識と野心が強くなり,あらゆる性質や能力が強化され,過剰になりやすい」と記している。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 26
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

準備時間2分

この「2分」という統計値を聞いた時には驚いたが,大きな大学の神経学部門のトップとして多くの大学院生とポスドクを抱える自分の経験に照らしてみると,たしかにその通りだと思えた。おそらくどこの職場でも,同僚やスタッフとの打ち合わせのための「リハーサル」や計画に,多くの時間が費やされることはないだろう。しかし,そのような個人どうしの直接的な関わりは,組織を成功に導く上で重要なはたらきをするはずだ。また,これらの打ち合わせで与えた印象が,あなたのキャリアの方向を決めることだってある。だからこそ,ごく個人的な打ち合わせであっても,事前に計画すること,少なくとも,たった数分ではなくもっと時間をかけて計画し,相手の反応を予測することが重要なのだ。
 心の中で,言いたいことを想定し,相手の反応も予測しておく。今のあなたにとって,その相手は10代の息子や娘だ。肯定的な反応と,否定的な反応の両方を予測し,それぞれのケースで,次に何を言うかを決めておくのだ。あなたがイライラしているように見えたり,頭が混乱しているように見えたりしたら,相手はあなたを信頼しないだろう。同僚や従業員であれ,10代の息子や娘であれ,それは同じだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 19-20
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

依存しやすい社会

世界は40年前より依存症に陥りやすいところになっているとグレアムは言う。食べ物もドラッグもテレビもコンピューターも,みな以前よりずっと魅力的になった。その結果,私たちは物を過度に好きになるという癖に陥ってしまったと言うのだ。「ぼくが知る限り,過度に好きになることを意味する言葉はない。それにもっとも近いのは”病みつき(アディクティブ)”という言葉の口語的な使い方だろう」。将来,病みつき状態になるのを避けたいと望む者には「1人で身悶えするような」運命が待ちうけている,とグレアムは予測する。私たちの人となりは,いよいよ,誘惑をどれだけ拒否できるかによって定義されるようになりつつあるのだ。

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 332

信憑性構造

社会学者はときおり,突飛な宗教的あるいは政治的教義が道理にかなったものであるように見せかけるための社会的支援ネットワークのことを「信憑性構造」と呼ぶことがある。一般的に言って,通念から逸脱している度合いが高ければ高いほど,そのような支援はより多く必要になる。緑色のクラゲを崇拝する人々が,その信仰を守りつづけるチャンスを手にしたいなら,信者は固く結束する必要があるのだ。
 これと似たようなことは,常軌を逸したポルノにも言える。インターネットが到来する前,異常な性的嗜好を持つ人たちは,満足できる素材探しに苦労していた。だが今では,どれほど変わったフェティシズムだろうと,欲情を刺激するイメージ——さらには自分の性的嗜好を共有する人たち——を探すことは可能だ。

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 292

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