人々はしばしば嘘をつく。他人に対しても,そして自分自身に対しても。2008年,米国人はサーベイに,もはや人種なんて気にしていないと答えた。8年後,彼らはドナルド・J・トランプを大統領に選んだ。白人のアメリカ人に対する殺人の大半は黒人によるものというデマをリツイートし,ある選挙集会では「黒人の命が大切」運動の旗印を掲げた抗議者への暴行をかばい,クー・クラックス・クランの指導者だった人物からの指示を拒むことを渋った男を選んだのだ。バラク・オバマの足を引っ張った隠された人種差別が,ドナルド・トランプの追い風になったのだ。
予備選の初期,ネイト・シルバーは,トランプが勝つ見込みはないに等しいと宣言した。予備選が進みトランプが広範な支持を集めていることが明らかになるにつれて,シルバーは何が起きているのかデータで検証することにした。いったいどうしてトランプはこんなに快調なのか?
その結果,トランプが最も優位な地域をつなぎ合わせると,奇妙な地図ができることがわかった。北東部,中西部工業地帯,そして南部で勢いがあり,西部では不振を極めていたのだ。シルバーはこの勢力図を説明できる変数を探した。失業率か?宗教家?銃所有率か?移民率か?反オバマ率か?
そしてシルバーは,共和党候補予備選挙でドナルド・トランプの支持に最も相関性の高いある要因を見いだした。それは私が4年前に見出した判断の手がかりだった。トランプ支持が最も強かった地域は,「ニガー」という語を最もよく検索していた地域だったのだ。
セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介(訳) (2018). 誰もが嘘をついている:ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性 光文社 pp. 25-26